デンマークデザインとは
「北欧デザイン」という言葉を聞くと、7月の特集記事でもご紹介したマリメッコのテキスタイルやアラビアのテーブルウェアなど、カラフルで華やかなデザインを想像する方もいるかもしれません。ところが北欧の中でも、デンマーク、フィンランド、スウェーデンなどでそれぞれ異なる特長を持っているのをご存知でしょうか?
デンマークデザインの特長と言えば、“素材”と”造り”。特に北欧家具の黄金期と呼ばれる40~60年代のビンテージ家具には、チーク材・ローズウッド材・オーク材などの上質な木材が用いられ、素材を活かしたシンプルなデザインがよく見られます。また、その多くは手仕事による工程を経て誕生するため、現代のように量産することが出来ないものがほとんど。 組み方や削りの丁寧さ、木の選定に至るまで当時だからこそ出来た手法により、多くの時間を費やして作られています。
今回は、デンマークを代表する家具デザイナーとして日本でもよく知られている、ハンス・J・ウェグナー、フィン・ユール、カイ・クリスチャンセンの3名のデザイナーによる名品をピックアップしてご紹介いたします。
それぞれのアイテムを取り入れながら、北欧の暮らしをイメージした簡単なスタイリングも行っておりますので、是非参考にして頂ければと思います。
Hans J. Wegner / ハンス・J・ウェグナー
CH24
生涯で500種類以上の椅子をデザインし、20世紀の北欧デザイン界に多大な影響を与えたとされる、Hans J. Wegner / ハンス・J・ウェグナー。
北欧家具を語るには外すことの出来ない、シンプルな美と機能性を追求したウェグナーデザイン。 21世紀になってもその輝きを失うことは無く、家具好きにとっての憧れの的であり続けます。
ウェグナー家具で知られる、Andreas Tuck / アンドレアス・タック
デンマークの伝統的な技法と良質な材を用い、クオリティの高い名家具を手がけていた、Andreas Tuck / アンドレアス・タック。
カールハンセン&サンやゲタマなど、デンマークを代表する家具メーカー5社が集まり、それぞれの得意分野に応じて家具を製作し共同で販売する団体「SALESCO(サレスコ)」のメンバーとしても知られています。
巨匠ハンス・J・ウェグナーによる名作をはじめ、1950〜60年代のデンマーク家具デザインを世界に知らしめる大きな役割を果たしました。
1. AT303 2. AT310 3. AT8 4. AT32
1972年に閉鎖したと言われており、その後PPモブラーがウェグナーのテーブルコレクションの大部分を引き継ぎます。現行販売が続いているロングセラーのモデルもございますが、既に廃番になっているものや、オリジナルと仕様が変わっているものも多く、アンドレアス・タック社製のウェグナー家具は年々希少性が高まりつつあります。そんな中で現在インプションには、希少なAT社製のテーブルが4台も揃っています。
クロスレッグが美しいAT303をメインに、定番のYチェアを合わせたダイニングシーン。
天板にチーク材、脚部にオーク材、そして天板と脚部を繋ぐ貫きには真鍮パイプを使用。巧みな素材づかいで機能性とデザイン性を両立させています。
また今回チェアには、チークやオークでも無い明るいビーチ材のYチェアを敢えてセレクトしました。異なる木材を組み合わせると色のバランスが崩れてしまうのでは?と不安に思う方もいるかもしれませんが、写真の通りチェアが程よいアクセントとなり、調和のとれた心地よい空気感を感じて頂けるかと思います。
これは、ウェグナーのシンプルデザインだからこそ可能にしているに違いありません。
Finn Juhl / フィン・ユール
「家具の彫刻家」と称される、Finn Juhl / フィン・ユール。デンマークのデザイナーの中でもアート性が高く、ひときわ美しい家具をデザインしたことで知られています。
その独特の造形感覚で作り上げる有機的なフォルムとディティールの美しさは、ヘンリー・ムーアやジャン・アルプといった曲線表現に長けた彫刻家らの影響を受けたとも云われています。
POET SOFA
46 CHAIR
フィンユールの家具は、有難いことに年々入荷数が増えており、現在インプションにはワンコレクション(現行)によるポエトソファのピンク色とベージュ色が1台ずつと、46チェアが2脚ございます。
布張りはレザー張りとはまた違うよりカジュアルな印象で、日常に違和感なく溶け込んでくれます。
ぽってりとした愛嬌のあるポエトソファに、ウェグナーのラウンドテーブルAT8を合わせたリビングシーン。
フィンユールの家具は特徴的なシルエットのものが多く、空間の主役にふさわしい存在感を放ちます。そこに、ウェグナーなどのシンプルな家具を合わせることでより個性が引き立ちます。
ポエトソファは、比較的コンパクトで日本の住居にも取り入れやすく、どんな体勢をとっても座り心地を損なわないよう考えられた、まさに日常に溶け込むアートピース。フィンユールの代表作の中でも気取らず親しみを持てるデザインで、家族や友人との団らんにもお勧め出来るソファです。
Kai Kristiansen / カイ・クリスチャンセン
「北欧デザインの父」と呼ばれたコーア・クリントの思想を継承し、実用的でスタンダードな美しさを持つ家具を数多く生み出しました。
宮崎椅子製作所にて、代表作であるNo.42やペーパーナイフシリーズなどの復刻生産を行っており、日本国内でも多くのファンを得ています。
ELEVATOR TABLE
NO.42 &(NV31)
復刻はしているものの、ビンテージでしか手に入らないチーク材のモデルはやはり特別な価値があります。現在インプションには、スコウアンデルセン社製のNo.42が2脚(色違い)、NV31が2脚(色違い)、トリオモブラー社製のエレベーターテーブルが2台と、全て希少なビンテージが揃っています。
画期的な機能を備えるエレベーターテーブルとNo.42を合わせたリビングダイニングシーン。
テーブルは、天板の伸長だけでなくその名の通り昇降することも出来、なんと全部で6通りもの使い方があります。またチェアは、姿勢に合わせて背もたれが可動。体にフィットしやすく、長時間座っていても疲れにくいよう設計されています。
ダイニングテーブルにリビングテーブル、ダイニングチェアにデスクチェアなどと、一台に複数の役割を持った汎用性の高さは、日本人の生活スタイルにもマッチし、ファンの心を掴む大きな魅力の一つではないでしょうか。それにしても、今から60年以上も前からデンマークの一般家庭でこのような機能的な家具が親しまれてきたことに驚きを隠せません。
最後に
日照時間が短く、自宅で長い時間を過ごすデンマークの人々にとって、家具やインテリアは特別なもの。お家は自分だけのパーソナルな時間を過ごす場所だからこそ、上質なインテリアにこだわり、日々の幸福を追求するという価値観が広く浸透しています。ファッションで自己表現する人がいるように、彼らにとっては住まいが個性を発揮出来る場所でもあるようです。
北欧デンマークの暮らしとデザインは、日本の家屋や日本人の好みとも相性が良く、90年代頃に起こった北欧ブームを皮切りに新たなスタイルとして私たちの暮らしにすっかり定着しました。また、豊かに生きる暮らし方に憧れ、その考え方にインスパイアされた方も多いと思います。
どれだけ造りの良い北欧家具でも、もちろん古いものなりの使用感はありますが、そのほとんどがリペアにより当時とそれほど遜色なく実用できる状態にまで蘇ります。そうやって丁寧に使い続けることで自ずと愛着も湧き、自分にとって欠かせない存在になっていくことでしょう。
インプションで、デンマークのビンテージ家具に触れるきっかけが作れたら嬉しいです。良い出会いがありますように。
*ご紹介した商品の在庫状況や詳細につきましては担当店舗に直接お電話下さいませ。
*デンマークに限らず北欧ビンテージ家具は、画像以外にも色々在庫がございます。下記をクリックしていただければ現在入荷分の一覧をご覧頂けます。