Mobelfabrik Holstebro
Writing Bureau
古着やファストファッションの中に高級品をさりげなく身に付けていたり、話しやすく気さくな人だと思っていたら実はどこかの大社長さんだったり。
地位や権力を大々的にひけらかすことがないのに、品やセンスがあってスマートな人って本当にカッコ良いと思います。
どうやらそれは家具にも通ずるようです。
真の贅沢
装飾がないわけではないけれど、全体に均整が取れているせいかなぜかシンプルだと感じさせるチーク材のビューロー。
デンマークの家具工房、Mobelfabrik Holstebro(別名・Falsig Mobelfabrik)で1960年代頃に製造されたミッドセンチュリーモダンの1台です。
葉っぱ型にくり抜かれた把手があしらわれた小さな抽斗に、四角い枠状のエッチング加工が施されたガラス扉。そして直線と曲線が入り混じるサイドのフレームライン。
上段だけでも数多くの意匠が散りばめられたこのデザインは、Gunnar Falsig(グンナー・ファルシグ)によるものですが、なんとArne Vodder(アルネ・ボッダー)の作品説も存在するそうです(たしかにリーフシェイプはボッダーの家具にも多用されています)。
さらに、中央にはスライド式のボードを備え、その形状からも前面が緩やかな弧を描いて膨らんでいるのが分かります。
大きな3段の抽斗には丸く削られた可愛らしいツマミ型の把手。脚もとは北欧らしい立ち脚で、経年のせいかそれぞれに木色が違うところもなんだか味わい深く思えます。
どこを取っても抜かりがなくて、どの部分も手が込んでいる。しかもチーク材のさらりと滑らかな質感に温かな色合いが相乗し、丁寧な美しさをダイレクトに感じられる。
それなのに、作り込まれた感じや仰々しい雰囲気がないのは北欧家具ならではの調和やバランスが保たれているからに他なりません。
幅89cmと比較的存在感のあるサイズで、収納力も抜群なうえデスクとしても使えるファルシグのビューロー。
上部にはお気に入りの雑貨を飾って、小さな抽斗にはアクセサリーやペン類を。ガラス戸の中には本をしまってもよいし、せっかくなら食器の見せる収納も楽しみたい。たまにはデスクで書きものをして、それから大きな抽斗にはやっぱり衣類を入れようか。
…なんて使い方を想像するだけでも楽しくなる1台。主張せずとも美しい北欧家具は、あるだけで本当に贅沢な気持ちにさせてくれます。