Carl Malmsten
スウェーデンビンテージ ガラスキャビネット
どこかで読んだ昔話。
貴族の館には、いつも一人の執事がいました。
主人の好みを知り、家族の歩みを知り、その家に必要なものを誰よりも先に察する存在。
若き日の当主に仕え、その子どもの成長も見守り、気づけば三代にわたって同じ家に仕えている。
客人を迎える日の器を選び、季節の変わり目には身の回りを整え、困りごとが起こる前にはすでに準備ができている。
そんな執事は、もはや使用人ではありません。その家の歴史を知る、かけがえのない存在ではないでしょうか。
ふと、このキャビネットについて調べていると、そんな執事の姿が重なって見えました。
家に仕える永遠の執事

こちらは、「スウェーデンの家具の父」と称される、家具デザイナーであり、建築家・教育者のカール・マルムステンがデザインしたガラスキャビネット。
スウェーデン家具ならではの端正な佇まいと、実用性を兼ね備えたガラスキャビネットです。

マルムステンのデザインする家具は、使う人を考え、暮らしの変化を受け入れ、長い年月を共に過ごすことを前提としたものづくりがあります。
「家具は生活を支える道具であると同時に、暮らしを豊かにする芸術である」
そんな思想がこのキャビネットにも表れています。


古典的なシルエットでありながら、華美な装飾を排した立ち姿が魅力。
直線的でありながら、アーチを描くような脚部は、スウェーデン家具らしい繊細な木工表現を見ることができます。

さらに、把手を兼ねた鍵もこのキャビネットの特徴です。
鍵そのものが開閉のための把手の役割を果たすことで、木とガラスによるミニマルな表情となり、クラシックでありながらどこかモダンな雰囲気を生み出しています。


直線的な箱体でありながら、両側面を内側へ落としたような台形のプロポーション。
さらに、奥行きは40cmに満たないすっきりとした設計で、壁際に置いても圧迫感が少なく空間に自然となじみます。
また、正面だけでなく斜めから見た時にもガラス面が視界に入りやすく、上部に飾られた器やグラスをさまざまな角度から楽しむことができるもの魅力の一つです。
上段のガラスキャビネットには、お気に入りの食器を上部のライトで照らしながらディスプレイ。下部の収納には、食器だけでなくリネン類やテーブル周りの道具を収めることができるだけの十分な容量を備えています。

マルムステンの使う人への細やかな心遣いが感じられるスライド天板。
取り出したグラスや食器を一時的に置いたり、その場で飲み物を準備したり、客人へサーブするための小さな作業台として使うことができます。
そのため、正面の作業スペースに干渉しないように、上下の扉は180°を超えてしっかりと開ききるような構造となっています。

クラシックでありながら、ミニマルな表情を持つこのキャビネット。
木の温かみとガラスの透明感という異なる素材を組み合わせながら、金具などの装飾を極力抑えることで、すっきりとしたモダンな印象に仕上げられています。
そのため、北欧の温かみを感じる空間だけでなく、現代的なインテリアにも自然と馴染みます。
流行のデザインを取り入れるのではなく、素材の美しさと普遍的なプロポーションによって、長い年月を経ても魅力を失わない家具となっています。
結婚し、子どもが生まれ、家族が集まり、やがて世代が変わっていく。
そんな時間の流れの中でも、このキャビネットは変わらずそこにあり、大切な器や家族の思い出を受け継いでいきます。
人と人が集まり、会話を楽しむ場所のそばで、必要なものをいつでも用意してくれる。
まるで何代にもわたって仕える、永遠の執事のような存在なのかもしれません。































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