家具と生きた人 "ハンス J.ウェグナー "
「私と家具とどちらが大事?」
ウェグナーの背中を見て育ってきた長女の言葉です。私と仕事どっちが大事?なんて、ドラマの世界では耳にしたことはありますがなかなか実際に言うことはありませんよね(いや、あるのかな?)。娘が嫉妬してしまうくらいに家具を愛し、家具と生きてきた人Hans Jorgensen Wegner (ハンス J. ウェグナー)。言わずと知れた北欧デザイン界の巨匠、北欧の家具を語る上で避けては通れない家具デザイナーです。
彼の残したデザインの数々はあまりにも有名で、一度は目にしたことがあるはず。そして、その家具に憧れを抱く方も多いはずです。でも、皆さんは彼の92年間の生涯のこと、ご存知ですか?彼のことをもっと深く知ってほしくて(知りたくて)少しだけまとめてみました。
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略歴
1914年 デンマークとドイツの国境の町・トゥナーで誕生
1927年 家具職人H.F.スタルバーグの元で家具の修行をスタートさせる
1931年 17歳で家具職人の資格を取得
1934年 兵役のためコペンハーゲンへ
その後コペンハーゲン美術工芸学校で家具設計を学ぶ
1938年 Borge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)と出会う
1940年 デンマークの建築家・Arne Emil Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)の事務所に勤務
1943年 独立 / FH-4283 「チャイニーズチェア」を発表
1947年 JH-550 「ピーコックチェア」を発表
1949年 JH-503 「ザ・チェア」を発表
1950年 CH-24 「Yチェア」を発表 / "GETAMA(ゲタマ)社" との共同開発をスタート
1951年 ルニング賞を受賞 / CH-28を発表
1952年 JH-505 「ザ・カウホーンチェア」を発表 / CH-29 & 30 ダイニングチェアを発表
1953年 PP-250 「ヴァレットチェア」を発表
1955年 GE-240/ CH-88を発表
1963年 CH-07 「スリーレッグド・シェルチェア」を発表
1986年 PP-130 「サークルチェア」を発表
1989年 PP-55/PP-56 「チャイニーズチェア」を発表
1995年 故郷トゥナーにウェグナー美術館が開館
2007年 92歳で生涯を終える
この年表の中に、気になる家具はありますか?もしかしたらその家具、インプションにあるかもしれません!ぞくぞく入荷中のウェグナーの家具たちを集めてみました。
体を通して感じる北欧の家具、ウェグナーのデザイン。
JH-550 PEACOCK CHAIR ピーコックチェア
(1947年 / JOHANNES HANSEN ヨハネス・ハンセン社)
扇状に広がる背もたれがまさにそれを連想させる「CH-550」。実は、名付け親はあのフィン・ユールです。羽を大きく広げた孔雀(くじゃく)を彷彿とさせるデザインは、矢のようにも見えることから別名アローチェアとも呼ばれています。
英国の伝統的なウィンザーチェアを元にしたデザインには、クラシカルな一面も残しつつ人間工学に基づいたウェグナーらしさが満載。決して、華やかな外見に重点をおいたものではありません!現在はPPモブラー社が製造を受け継いで正規品として販売を行っていますが、1992年以前のヨハネス・ハンセン社で製造されていた希少なビンテージモデルが下北沢店&学芸大学店&経堂店に入荷しています。(なんと現在3脚のコンディション良好なビンテージピーコックがインプションに!!)
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JH-503 ザ・チェア
(1949年 / JOHANNES HANSEN ヨハネス・ハンセン社)
「椅子の中の椅子」という敬意を込めてザ・チェアと呼ばれるチェア「JH-503」。ウェグナーの名をこの世に知らしめた最高傑作でもあります。
これ以上シンプルにできないほどにひとつとして無駄のないデザイン。究極の構造と美しさ。座らずともその座り心地も触り心地も想像できるほどに繊細な曲線。こちらもピーコックチェア同様、ヨハネス・ハンセン社によるビンテージ品が入荷しておりました。が、すでにご予約をいただいております。こちらはなんと70年代に購入し、ほぼ使用されていなかったデッドストックに近いグッドコンディションで、奇跡のような美しさを放つチークフレームのザ・チェアでした。またいつかお目にかかれる日を待つばかり。
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CH-24 Yチェア
(1950年 / Carl Hansen & son カールハンセン&サン社)
ウェグナーの代表作といえばやっぱりこれ!ご存知、Yチェアこと「CH-24」です。もはや北欧椅子のスタンダードとも呼べるほどに、目にする機会が多いこのチェア。これだけ多くの人に愛され続ける椅子というのは、数えるほどしかありません。
石鹸水を塗り込むこと(ソープフィニッシュ仕様)で自然の風合いを生かしながら使い込むほどに味わい深くなるフレーム。古くなっても張り替えることで蘇る座面(ペーパーコード)。古くなったら買い替える" 使い捨て "の時代に、リペアすることで "使い継ぐ "ことのできる椅子をもつ贅沢さをぜひ味わってほしいと思います。(学芸大学店に展示)
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Yチェアの背もたれなし?のようなスツール、「CH-53」も合わせて。
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CH-88 ダイニングチェア
(1955年 / Carl Hansen & son カールハンセン&サン社)
「木」の名作が多い彼の作品の中で、異素材であるスチールをミックスさせた椅子「CH-88」。ナチュラル(木)とインダストリアル(スチール)、曲線と直線の真逆のコンビネーションは、まさに" 融合 "という言葉がぴったりです。
1955年、このチェアが発表された当時はプロトタイプしか生産されておらず、ウェグナー生誕100周年を記念して2004年に復刻されました。実は数少ない" カラーバリエーション "という特色を表したチェアでもあります。ブラック以外のカラーもいつかはインプションに入荷しますように。
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GE-290 3シーターソファ
(1950年代 / GETAMA ゲタマ社)
50年代初頭からウェグナーとの共同開発を行ってきたGETAMA(ゲタマ)社。1899年にデンマークで生まれたベッドのマットレスメーカーです。創業した町の名前" GEdsted "、海藻を意味のする" TAng "、マットレスの" MAttress "の頭文字をとって「GETAMA」というユニークな由来からも分かるように、もともとはソファメーカーではありませんでした。ちなみに、なぜ海藻かというと当時マットレスの中身には海藻が使用されていたんだとか(びっくり)!
ひとつひとつのパーツが洗練されていて、どこから見ても美しい「GE-290」の魅力は、その均整のとれたデザイン。そして人間工学に基づいた安楽性と高い技術から生まれる耐久性。巨匠とプロフェッショナルがタッグを組んだからこそ生まれたソファに一度座ったら、もう他のソファには座れないかも?(用賀店に展示)
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GE-240 Cigar Chair シガーチェア
(1955年 / GETAMA ゲタマ社)
先ほど紹介したGE-290同様、GATAMA(ゲタマ)社の「GE-240」です。実用性を重視したウェグナーは、デザインに快適性を追求することで" 生活の道具 "としての作品(=家具)を作り続けてきました。そこにゲタマ社のマットレス製造のノウハウが加わったのだから、その座り心地はもう説明するまでもありません。
やや丸みのあるフォルムとコンパクトなサイズ感。あれ、GE-290にそっくり?と思った方!そう、実は同じテーマの作品を繰り返しリデザインしながら作り続けたウェグナーのもしかしたら改良版なのかもしれませんね。皆さんは、どちらのデザインがお好きですか?(自由が丘店と祖師ヶ谷大蔵店に展示)
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CH-28 ラウンジチェア
(1951-2年 / Carl Hansen & son カールハンセン&サン社)
ソーホースイージーチェアとも呼ばれている「CH-28」。そもそもソーホースとは、直訳すると木挽き台を意味する木を切るときに使う4本の脚を持つ梁、台のことです(うまく説明ができないので、検索してみてください)。そのソーホースをベースに作られた椅子というわけですが、その脚部より" 前ならえ "したかのように、ピンと真っすぐ伸びるアームが気になるのは私だけではないはず。
ユニークな形状ながら、安定感は抜群。ゆったりと読書を楽しんだり、コーヒーを飲んだり。気取ることなく、日常の中で" ラフ "に使ってほしい1脚は祖師ヶ谷大蔵店でご覧いただけます。
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その他の家具
際立つ天板の表情。直線を基調とした寄せ木が美しい模様を描いている「CH-320」は、中古市場で流通の少ないレアアイテムです。Carl Hansen(カール・ハンセン)社の商品ですが、製造は寄木細工を専門とする「トラネケア / Tranekaer Furniture」が行っています。(祖師ヶ谷大蔵店に展示)
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1950年代に手掛けた「AT-33」は珍しい" 裁縫のための "テーブルです。チーク材とオーク材の奏でるコントラストが美しく、天板下からのぞくバスケットが愛らしく感じられる逸品。こんなにナチュラルで温かみのあるテーブルが、お裁縫のためだけに作られたなんて!ウェグナーと北欧を同時に感じられそうなテーブルです。(経堂店に展示)
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公共施設での使用を想定されて作られた「Model882 」Koldinghus Chair(コリングチェア)。このミニマルさがずらりと並んでいる様子は圧巻だろうな、と想像出来ちゃいますね。整ったラインが生み出す凛とした清潔感のある佇まいが魅力的なチェア。こちらはゲタマ社製ではなく、Frederica製の希少な1脚が学芸大学店でご覧いただけます。(学芸大学店に展示)
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おわりに
「芸術の分野で際立ってすぐれた人。傑出した人物。」そんな人のことを表す言葉 " 巨匠 " 。なんだか手の届かない存在のような表現ですが、ウェグナーの作品は芸術品ではありません。
彼の家具たちを日常に取り入れるのは贅沢?いいえ、ここまで紹介した家具たちも、生活に取り入れることを前提に生み出されたものばかりです。
憧れのハンス J. ウェグナーのある暮らし。その第一歩を踏み出すお手伝いができたらとっても嬉しいのです。はじめの一歩(二歩目も三歩目も)はぜひインプションで。スタッフ一同、お待ちしております。