Knoll
420 Side Chair
彫刻と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?
有名な作品であれば「ミロのヴィーナス」や「サモトラケのニケ」「ダビデ像」であったり、建築物であれば「サクラダファミリア」や「ミラノ大聖堂」、日光東照宮の「陽明門」や日本の様々な仏像など、思い浮かべるものは多種多様だと思います。
そしてそれは家具にも。インテリアデザイナーという肩書きだけでなく、建築家や画家等の複数の肩書きを持つアーティストもいます。
本日ご紹介させていただくのは、金属彫刻家という側面を持つ一方、家具デザインやジュエリー製作、グラフィックデザインや音響彫刻など多種多様な作品を手掛ける、イタリアのアーティストの作品です。
ワイヤーの向こうに見えるもの
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今回ご紹介させていただくのは、ハンス・ノルによって1938年にニューヨークで設立された世界的に有名なファニチャーブランド、“ノル Knoll”より“420 SideChair 420サイドチェア”。
ミース・ファン・デル・ローエやエーロ・サーリネン、マルセル・ブロイヤーなど、時代の先端をいく建築家やデザイナーとの画期的なコラボレーションを実現し、近代のデザイン史に大きな影響を与えました。
決して妥協せず、研究を重ねて作り上げられた製品は、半世紀以上たった今でも美しさと心地よさを備えた“使われる芸術品”と言われ、多くの人に愛されています。
そしてこの“420サイドチェア”のデザインを手掛けたのが“ハリー・ベルトイア Harry Bertoia”。
デトロイト州にある工科大学でデザインやジュエリー制作を学んだ後、1937年よりクランブルック美術アカデミーに入学、同時期にはイームズ夫妻やエーロ・サーリネンが在籍していました。
実は卒業生仲間であるチャールズ・イームズと、積層合板と曲げ加工の開発を行っていたそう、有名なイームズの椅子にベルトイアが大きく貢献していたことはあまり知られていません。
彼が得意とする金属加工の技術は、「ダイヤモンドチェア」など彫刻美ともいえるワイヤーチェアを生み出し、20世紀最大の家具デザインの功績の一つとして世界中に認められています。
人体構造に合わせて作られたスチールのシートの曲線は、一つずつ異なる網目を構成しているために絶妙なフィット感があり、この椅子でしか味わえない座り心地を楽しむことが出来ます。
又、シートのスチールが交わる部分は今も昔も変わらず、一つ一つ手作業で溶接作業が行われているそう、しっかりとした強硬なつくりでありながらも軽やかで、投影される影さえも美しく見えます。
シートと共に無駄を省いた、清々しいほどにシンプルな直線のレッグ。
従来のチェアと異なり背・座・脚部其々に隙間があることで圧迫感を与えず、手狭な空間に設置してもスッキリとレイアウトすることができる上に、ワイヤーの奥に何か見える事を想像しながらインテリアの配置を考えることも楽しいかもしれません。
フィット感があるといっても、スチールの素材とクッションの無いワイヤーだけでは、流石に長時間の着座には不向きで身体も痛くなりやすいものですが、今回は純正のシートパッドが付属。
ポップでアイコニックなレッドカラーのシートパッドは、柔らかなレザーの手触りも良く、着座の快適さ向上に加え、見た目の華やかさも増してよりモダンな雰囲気を楽しむことが出来ます。
ベルトイアが「空気と銅の彫刻である」と言い表したシリーズのひとつであり、名作と呼ばれるのも納得できる“420サイドチェア”。
彫刻家でもある彼の造形美への拘りが、ワイヤーの隙間の一つ一つに表れている逸品です。