Le Corbusier
Oeuvre Plastique
本日は、「近代建築の巨人」と称される建築家" ル・コルビジェ / Le Corbusier "(1887-1965)による大変貴重なビンテージポスター『 Oeuvre Plastique 』のご紹介♪
コルビュジェの別の顔
イタリア・カッシーナ社のLCシリーズでもお馴染みのル・コルビュジェですが、今回は珍しく名作家具ではない平面アイテムです。コルビュジェの基本情報も含め、ポスターの希少性を説明する為、長文になりますが、どうぞお付き合いください。
ル・コルビュジエ(本名:シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリ)。有名な建築家で一度は聞いたことがある名前ですが・・・、そう、実は本名ではなくペンネームです。パリで前衛芸術家達と創刊した「L'ESPRIT NOUVEAU」に寄稿した時に使用され、その由来は母方の曽々祖父の名前から命名されたと言われています。一方、本名に含まれる聞き馴染みのあるジャンヌレという名前、実はル・コルビュジェはピエール・ジャンヌレはいとこにあたります。
フランスの歴史的建築物「サヴォア邸」や「ロンシャン礼拝堂」、世界遺産に登録され日本で唯一のコルビジェ作品として知られる東京上野「国立西洋美術館」等、スチールと鉄筋コンクリートを組み合わせた幾何学的な建築を設計。一般的には建物や家具デザインが有名ですが、実は数多くの絵画作品を手掛けた画家としても大成しています。
コルビジェは1918年、同氏に絵画制作を勧めたピュリスムの画家アメデエ・オザンファン(Amedee Ozenfant)に出会いました。「ピュリスム」は、パブロ・ピカソでお馴染みキュビスムと比べるとあまり聞き馴染みが無いかもしれませんが、キュビスムと同様に立体的なモチーフを平面的に描いた美術表現主義。両者は一見大差が無い様に思われますが、キュビスムがモチーフを解体・変形・展開し、モチーフの原形をとどめない事もあるのに対し、ピュリスムはモチーフが何かわかる様に描いてるところが特徴です。
彼のモダニズム建築は一見して彼の絵画表現からの反映というよりは、度々用いてきた鉄筋コンクリート構造に依拠しておりますが、特に彼のピュリスム絵画作品からは建築設計を彷彿とさせる三次元的な空間の構築が際立ち、同時代を歩んだ共にオザンファンと比べても、歯切れのよい輪郭や立体を意識した構成が見て取れます。また前述の「サヴォア邸」はピュリスム建築の集大成として評価をされ幾何学的な造形が際立った建築として知られています。
芸術に普遍的な規則を求め、比例と幾何学によって明快な構成をつくりあげるピュリスム。なお、絵画制作においては、1928年まで本名が使用されていましたが、ピュリスムを追求しようと志をもち、それ以降「ル・コルビュジエ」と名乗る様になります。
やがて当初コルビジェが批判していたキュビズムの再評価により、コルビュジェの志向は「幾何学的な秩序」から「人間と自然との調和」へと変化。1925年には遂にピュリスムの終焉を迎えますが、以降も自然の表面にある混沌の奥に幾何学的要素を見出し制作は続けられました。
こちらは1953年のパリ国立近代美術館にて開催された展覧会「Oeuvre Plastique」の為に製作されたビンテージリトグラフポスターになります。
展覧会の展示作品、展示内容についてはインターネット上ではほぼ見つかりませんでした。しかしながら、インテリアとしての安価なプリント印刷のポスターでも使用されているグラフィックである事から、希少な芸術家としてのコルビュジェ展としても、当時かなりの注目を集めていた事は想像に難くないと思われます。
当時の展示作品のグラフィックなのか、または展覧会のテーマをイメージしたオリジナルのデザインなのか。そのビジュアルは、モダニズム建築の巨匠としてのコルビュジェのイメージとは離れ、線描のハンドドローイング感と鮮やかなペインティング等、想像力を掻き立てる直線と曲線の色彩構成が印象的です。
また安価なコピー品とは一線を画す今回の重要なポイントは、そのポスターを製造した印刷工房とコルビュジェの関係性です。コルビュジェをはじめ、ピカソ、マティス、シャガール、ミロ等の歴史的芸術家達を虜にした1852年創業フランス・パリの版画工房" ムルロ工房 / Mourlot "が製作。1930年にルーブル美術館で開催された『ドラクロワ展』のポスター制作で脚光を浴び、" 世界で最も美しい "と称され、ティスやミロなど多くの芸術家が参加したフランスの芸術文芸誌「ヴェルヴ」とのコラボレーションを行う等、当時のアート業界を牽引した伝説的な印刷工房です。
コルビュジエは生涯25点程のリトグラフと15点のポスターを制作しましたが、それらは全てがこのムルロ工房でつくられたものと云われています。コルビュジエと同社の3代目フェルナン・ムルロは仕事の枠を超え、あのル・コルビュジエが愛した別荘、南仏「カップ・マルタンの休暇小屋(キャバノン)」の鍵をフェルナンに貸すほど仲がよかったそうです。
デザイナーズ家具や照明、食器を主に取り扱うインプションですが、年に1~2度、掘り出し物の様に入荷があるのが希少な絵画や版画作品。同氏の作品は家具としてはイタリア・カッシーナ社「LCシリーズ」等のお取り扱いが度々ございますが、ポスターは非常に希少で、中古市場でも極めて流通が少なく、再入荷の難しいビンテージアイテムになります。現品限りの在庫となりますので、是非機会お見逃しなく!ご注文はお早めに♪