Artek
Domus Lounge Chair
この時期は着るものに悩みます。
割合汗っかきな自分としては、ウールものやニットはまだ早い。かといって薄手の半袖では流石に寒さは防げない。結果ふわりと羽織れるコットンの長袖シャツやバスクシャツ、スイングトップあたりの使いやすいもので何とか乗り切っています。このブログをご覧の皆様はいかがでしょうか。
今回のご紹介は、日本から遠く離れたフィンランドで多くの人のくつろぎを支える名脚。宜しければ最後までお付き合い頂けますと幸いです。
モダニストの夢
イルマリ・タピオヴァーラ。フィンランド出身のデザイナーの中で、多くの人に愛される作品を作り出した人物です。
フィンランド土着の椅子をモダニズムのフィルターの中で再構築したファネットやピルッカ、マドモワゼル、ポストモダンの流れを感じる事の出来るキキやルッキ等、椅子を挙げただけでもワクワクしてしまう人物なのです。
そんなタピオヴァーラはル・コルビジェやミース・ファン・デル・ローエ、そしてアルヴァ・アアルトと数多くの巨匠のもとで働いた経験を持ちますが、その名前が広く知られるきっかけとなったのはドムス・アカデミカのプロジェクトを手掛けた1947年。
パートナーである妻のアンニッキと共に手掛けたドムス・アカデミカはフィンランドの首都ヘルシンキに建設された学生のための集合住宅。建築家パウリ・サロマーによって設計された建物は規則正しく立ち昇る外観に、中庭にはガラスをあしらったさながら小さなルーブル・ピラミッドが、地下への採光性を高めた設計を見て取る事の出来るモダンな建築物。
その内装にタピオヴァーラが置いたのは2つの椅子。一つはドムスチェア。そしてもう1つは今回のドムス ラウンジチェア。フィンランドを代表する椅子という事で、この2つは「フィンチェア」と呼ばれ親しまれています。
同じ場所、同じ施設のために設計されたこともあり共通部分も多いこの2つ。コンパクトに伸びる無垢材のアーム。そしてプライウッドによって立体的に仕上げられたシート。木のぬくもりに溢れながらも、重厚過ぎず大柄過ぎず。
フィンランド、そしてタピオヴァーラのデザインに共通する実用性を感じる事が出来ます。
Keravan Puuteollisuus Oy(日本語で言うならケラヴァ木材工業になるでしょうか)によって当初製造されたのは1946~1950年頃まで。
当時は技術的に難しかったのか背もたれと座面が別々に作られていたラウンジチェアは、50年以上を待って一体成型のシートとして日の目を浴びる事に。
LCW・DCWからシェルチェアに代表されるイームズ夫妻、そしてアルネ・ヤコブセン。多くの名デザイナーが憧れ願った「ひとつなぎ」のシートは、目にした人をいざなうような包容力を持っています。
波打つ様な座面。そして肩を外から覆うような背もたれは様々な姿勢を可能としています。
奥深くまでしっかりと座れば少し肩側にスペースが空き、しっかりとした腰元のホールド感を楽しめます。
少し手前におしりを動かせば、背中・アーム・波打つシートの傾斜の丁度良いところの3点で、「フィット」する座り心地。
シート幅も程良くあるので脚を組んだり半身になったりもお手のもの。
その心地良さは多くの人を虜にしたのでしょう。
現代の憩いの場、フィンランドのスターバックスにはこのドムス ラウンジチェアがずらりと並べられて、その特別感を引き立てています。
板座の仕様もありますが、今回はSCOPEさんで取り扱われているレザークッションが張り込まれた1脚。より長い時間を名作でお過ごし頂けます。
時代を代表するモダニストが描いた夢のかたちが現実となった素敵な1脚。
ちょうど良く、心地よく。フィンランドのくつろぎを楽しめるラウンジチェア。imptionでも初めての取扱いとなる貴重なプロダクトを、是非ご自宅にいかがでしょうか。