特集:ハンス・J・ウェグナーと3つの家具メーカー

特集:ハンス・J・ウェグナーと3つの家具メーカー

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GETAMA, Andreas Tuck A/S and Johannes Hansen

20世紀の北欧デザインを牽引してきた巨匠ハンス・J・ウェグナー。生涯で500点以上もの膨大な数の椅子を誕生させ、その殆どが名作と呼ばれています。13歳の頃より家具職人として修業を始め、その4年後には指物師マイスターの資格を取得。木に触れ、素材の特性を知りながら培った家具製造の経験が、同氏のデザインの基礎となっています。 ウェグナーの家具を製造する家具メーカー。または製造していた家具メーカーは幾つか存在しておりましたが、インプション最大の展示面積を有する祖師ヶ谷大蔵店にて、現在3社のデンマーク家具メーカーのプロダクトを在庫しております。 言うまでもなくアイテム其々も名作でありますが、今回は「家具メーカー」にフォーカスしご紹介したいと思います。

GETAMA

まずは弊社の入荷商品の中でも最も販売数多い" ゲタマ / GETAMA "社から。同社は1899年、デンマークの街ギズステズ(Gedsted)にてマットレス(Mattres)の専門メーカーとして創業。現在はスプリングやウレタンフォームを使用していますが、当時は詰め物に海藻(Tang)を使っていました。其々の頭文字を取って「GETAMA」という社名が付けられました。 同社に限らず、社名のアルファベットに地名やコンセプト等の頭文字を採用する会社は、世界、また日本でも多く見られますが、私がGETAMAの意味を初めて知った時、「TA」が「海藻」を意味しており、詰め物して使われていた事はとても意外で驚いた記憶があります。 創業当初はソファではなく、マットレスの製造を手掛けておりましたが、10年後の1953年頃に家具のコレクションを開始。ウェグナーとの協働を始めた事で、同社の社運を左右する様々な名作チェアやソファが誕生し、今日まで世界で高い人気を集めています。 同社製品の中で最も人気を集めているのが1953年頃にデザインされた『 GE290 』。日本では「ニーキューマル」と呼ばれています。現在祖師ヶ谷大蔵店では張替がされずに今日まで良好なコンディションを保っているオリジナルファブリックを使用した「GE290 ハイバック」と、ロイズアンティークス取り扱いの珍しいボタン留め仕様の「GE290 3シーター」。またそれら290と比べると入荷頻度の少ない同社の「オーク無垢集成材 ローテーブル」を在庫しております。

GE290 sofa 1-seater highback

GE290 sofa 3-seater

Solid oak coffee table

Andreas Tuck A/S

続いては、1924年創業、デンマーク・オーデンセの挽物工房" アンドレアス・タック / Andreas Tuck A/S "社です。デンマークが外貨を稼ぐ為に輸出に力を入れていた頃、「サレスコ / SALESCO」という共同販売会社が1951年に活動を始め、1955年にデンマーク家具メーカー5社と共に組織化されました。GETAMA、Carl Hansen、AP stolen、RY Mobler社という名だたる家具工房と共にAndreas Tuckもそのメンバーに加わり、各メーカーの得意分野に応じてウェグナーの家具を製作しました。 当時の人口約400万人程、現在でも585万人と、国民総人口が千葉県の人口に満たない小さな国で、自国販売だけに頼らず海外に打って出る為に各社が共同で販売。ウェグナー家具及びデンマーク家具デザインを世界に知らしめる大きな役割を果たしました。同社はテーブルをメインに製造しておりましたが、惜しまれつつ1972年に廃業。その後は一時Yチェアを製造していたCarl Hansen社に製造権を移す話もあったようですが、PP Mobler社がそれを受け継ぐ事となりました。 既に存在せず家具製造を終了している事から、現存するアンドレアス・タック社製ウェグナー家具は非常に希少。本物志向のコレクターアイテムとして、現在でも注目を集めています。祖師ヶ谷大蔵店ではダイニングテーブル「AT303」とコーヒーテーブル「AT8」の在庫がございます。

AT303 dining table

AT8 coffee table

Johannes Hansen

最後は" ヨハネスハンセン / Johannes Hansen "社になります。「伝説の家具工房」と呼ばれ、こちらも惜しまれつつ1992年に廃業となったデンマークの老舗家具メーカー。ご想像の通り、社名は創設者の名前です。ウェグナーとの交流は1940年よりはじまり、1941年にウェグナーが初めてデザインした家具が首都コペンハーゲンにあったヨハネスハンセンのショップでディスプレイされました。 1949年、キャビネットメーカーズギルド展に名作" ザ・チェア / The Chair (JH501) "が有名で、生涯で500種類以上の椅子を世に生み出したウェグナーの作品の中でも「最も完成度が高い」と評価されております。1960年、アメリカ大統領選でジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソンによる伝説的なテレビ討論会で登場した事で、その知名度は一気に上がります。「椅子の中の椅子」として『ザ・チェア』という愛称が付けられる程の歴史的名作。廃業の後はPPモブラー社が製造を請け負っております。 現在在庫しております「JH-512」は" ザ・チェア (JH501) "と共にキャビネットメーカーズギルド展にて発表された初期のデザインとして知られています。折り畳み可能で、当時販売されていたフックで壁に飾れるように設計されたもの。ラタン特有の自然の濃淡は勿論、座面前部に少し隙間をつくっている所等は、実用性というよりも観賞用としてオブジェのように演出出来る造形的な美しさを感じさせます。

JH-512 folding chair

デザイナーの知名度が極めて高い為、これまでメーカーについてフォーカスする機会はあまりありませんでしたが、「3社だけ」といえど、その基本情報だけで文字数たっぷりになってしまいましたので、今日はここまで! あらためて調べて深堀してみると、開業から廃業までに様々なストーリーがあり、人々の出会いやその国の事情、時代の流れ、家具の歴史のターニングポイント等が関わりあっているように感じました。ウェグナーに限らず、あなたが日頃座っている椅子、そのメーカーがどのようにした生まれたか等、興味を持って調べてみるのも面白いかもしれませんね♪
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