House of Finn Juhl
46 Chair Walnut
20世紀の家具デザインの一つのテーマとして、「大量生産性と美しさのバランス」が挙げられます。
多くのデザイナーが新素材や新技術を用いてアイデアを形にしていった時代。アアルトのスツール60やイームズのシェルチェアといった定番たちは、「同じものをたくさん作る」という命題を見事にクリアした代表例と言えます。
しかしながら、敢えて生産性をスポイルすることで、芸術性を高めた孤高のデザイナーが存在します。
私は彼のことを、家具デザイナーではなく芸術家だと思っています。
芸術家の折れない信念

デザイン大国デンマークが生んだ巨匠"フィン・ユール Finn Juhl"。
デンマークと言えばハンス・J・ウェグナーやアルネ・ヤコブセンなど、著名なデザイナーが同時期に活躍しており、彼らの作品は比較的見かけることも多いと思います。
それらとは対照的に、極端にお目に掛かる機会の少ないフィン・ユールの家具。

その理由は彫刻のような繊細なディテールにあります。
並の職人では再現できないユールのデザインは、当然のことながら大量生産には不向きで、強度やコスト面のハードルから、オリジナルがいくつか作られたきり再生産されなかった作品が多数存在します。


今回入荷した『46チェア』を見てみましょう。
背もたれから流れるようにアーチを描く後ろ脚ですが、普通は曲木や接ぎ木が用いられるところを、なんと無垢材を削り出して作られています。
言うまでもなく、完成品よりも多くの無駄が生じるだけでなく、削る手間も考えると、およそ経済的とは言えません。


しかし、思い描いたディテールに一切妥協しないのがフィン・ユール。
座面の下にはクリアランスが設けられ、視覚的な軽さが表現されています。
脚間の貫は前脚と後方のフレームへと斜めに渡す斬新なアイデア。
この直線的なパーツが曲線を多用した造形の中で立体感を生む、とても素晴らしいデザインだと思います。
当時の技術では再現するだけでも大変だったことでしょう。

1946年に誕生してからわずかに生産されたのみで、目にすることも叶わない幻の一脚と化していた46チェアですが、21世紀に入って状況は一変しました。
フィン・ユールの諸作品を正式ライセンスのもと現代の技術で復刻させる、"ハウス オブ フィン・ユール House of Finn Juhl"が2001年に立ち上げられ、実に70年(!)の時を経て46チェアも晴れて再生産に至りました。
優れたデザインがまた日の目を見ることになるのは本当にありがたいことですよね。

フィン・ユール作品はポエトソファやペリカンチェア、チーフテンチェアといったソファの入荷が度々ございましたが、ダイニングチェアは今回が初めてのお取り扱いとなります。
こちらはタグまでついた美品と言えるコンディション。同仕様が下北沢店にも入荷しておりますので、この貴重な機会にぜひ店頭でお試しいただければと思います。