Herman Miller
Six Stool covey model
どんなものにも付きまとう“定番”や“名作”の二文字。
心強い時も勿論あるものの、少し経てば飽きてしまうという時もあるのではないでしょうか。
特にデザイナーズがお好きな方やコレクターの方は少し変わったモノや希少なもの程、強く惹かれることかと思います。
本日ご紹介させていただくのは、誰もが知るブランドの隠れた逸品、家具好きの方必見のアイテムです。
静かに現れたクラシック
1923年に創業、数多くの名デザイナーと協働し名作を残した、ミッドセンチュリーを代表するアメリカの世界的家具ブランド“ハーマンミラー Herman Miller”。
今回ご紹介させていただくのは、同社より“シックススツール Six Stool”。
“コーヴィースツール”や“モデル・シックス”とも呼ばれており、情報も少なく、希少価値の高い一脚です。
デザインを手掛けたのは、アメリカ・サンフランシスコのデザイナー“ジェフ・コーヴィ Jeff Covey”。
独学でデザインを学び、1996年にサンフランシスコのスタジオで商業用および住宅用のプロジェクトの制作を始めたジェフ・コーヴィ。
1997年にスツールの最初のプロトタイプを開発し、その後、改良したプロトタイプを持ってニューヨークへ、アポイントメントなしでKnoll社に問い合わせ、当時のデザインディレクターに会います。
Knoll社は直ぐにこれがクラシックの誕生だと気付き、翌日ニューヨーク近代美術館 (MoMA) でコーヴィと会う約束を取り、MoMAでの打ち合わせ中に最初の注文を、スツールの製造と流通を開始するために必要な資金も受け取り、成功を納めます。
スツールの成功はハーマンミラー社の目に留まり、コーヴィはハーマンミラー社に5年間のライセンスを供与します。
ハーマンミラー社が製造を手掛け、後にコーヴィ自身のスタジオへと移りましたが、2008年以来は新たな製造はおこなわれておらず、現在は残されたパーツでほそぼそとレストアが行われているそうです。
当初「コヴィー モデル シックス スツール」と呼ばれていたこの製品は、6つのパーツが平らな状態で出荷され、顧客が組み立てる形だったそう。
スチールロッドによる脚部とそれらをまとめる三角形のパーツが座面を支えており、思想家・建築家のバックミンスター・フラーによって提唱された概念、Tension(張力)とIntegrity(統合)の造語である”テンセグリティ(tensegrity)”という概念を連想させる構造に。
古びたアイロン台からインスピレーションを受け誕生したミニマルなデザインは、最小限のデザインながらとても安定した強度とバランスを保っています。
流れるような杢目の表情と温かみのあるメープル材プライウッドを使用した座面に、インダストリアルな雰囲気の脚部の組み合わせは、美しいコントラストを生み出し、洗練された佇まいに。
座面の高さは回転式で約13cmの調整が可能で、体格や用途に応じた柔軟な使い方ができる実用性を備えています。
スタイリッシュなシルエットとコンパクトなサイズは、他のインテリアを邪魔せず様々な空間に馴染みます。
素晴らしい作品は多くの人に知ってほしいと思う反面、これ以上見つかってほしくないとも思ってしまいますが、後世にもその価値を残すためにはやはり知られるべきなのでしょう。
サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)の永久展示品に選ばれており、アート作品のような佇まいで小ぶりながらも存在感のある隠れた逸品。
本場米国でも当時のものは少ない希少な一脚、是非コレクションに加えてみてはいかがでしょうか。