KOTOBUKI
FRP Side Chair
家具に興味をもつようになった今でこそ、古い施設で使われている設備にも目を向けるようになりましたが、まさか公共の場に有名なデザインが潜んでいるとは露知らず。
最近も不特定多数の人が集まるとある場所に長大作のフリーダムチェアがものすごく雑にぽつりと置かれているのに気づいて、びっくりしました。
ホールや劇場、空港や病院などで何気なく座っていた椅子が、もしかするとデザイナーズチェアだったかもしれません。
パブリックからパーソナルへ
日本を代表する工業デザイナー、柳宗理が手掛けたFRP製のサイドチェア。このチェアもまた公共施設で使われ、ひっそりと活躍した市民の椅子のひとつです。
もともとは日本民藝館の会議室用の椅子として1969年に誕生し、2006-10年にはコトブキ60にて復刻製造が行われましたが現在は廃番になっています。
こちらは、香川県のモダニズム建築、坂出人工土地の市民ホールで1974年の開館時から約45年間実際に使用されていたプロダクト。
一般販売されたシェルはホワイトのみだったことを考えると、レッドシェルはこの場所だけのために作られた別注カラーであることが分かります。
脚部には連結や重ねて収納ができるスタッキングベースを採用。パブリックスペースでの実用面を優先した仕様でありながら、脚幅が広いことで安定感のある座り心地も実現しています。
また、シェルの強度を高めるために取り入れられたぷっくりとしたお尻のふくらみが独自のフィット感を生み出し、シェルのしなりと相まることで長時間の着座でも快適に過ごせるデザインに仕上げられています。
そんな万人に共通の心地よさを感じさせる椅子だからこそ、自宅でもシーンを選ばず使うことができる。ダイニングチェアとしてはもちろんデスクチェアとしてもおすすめです。
しかもファブリックは張替済。使い込まれた生地をリフレッシュすることで新品のような気持ち良さと新たなカラーリングによる特別感が加わっています。
現代に比べ公共施設用のアイテムの生産を担うメーカーが限られていたせいか、貴重で希少な名プロダクトが数多く使われていた古き良き時代。
とりわけ長い年月を耐えうる強靭なミッドセンチュリーデザインは、公共の場での役目を終えてもなお使い続けることができます。
歴史という付加価値をまとった柳宗理のビンテージチェアを、自宅というまた違った場所で存分に堪能していただきたいと思います。