Carl Hansen & Son
CH24 Y CHAIR
本日は「理数的な美」と「原始的な心地良さ」が内包する北欧デザインの到達点、言わずと知れたハンス・J・ウェグナー不朽の名作" カールハンセン&サン / Carl Hansen & Son "『 Yチェア 』のご紹介♪
まどろみの分岐点


Yチェアの物語は、14世紀中国の「圏椅子(クェン・イー)」という様式美から始まりました。ウェグナーはその権威的で重厚な椅子から、余分な装飾を徹底的に削ぎ落とし、丸、三角、四角、それぞれの形が持つ心理作用が強く働く、印象的なフォルムを生み出します。
太い背板を「Y字」という最小限の支柱へ、接ぎ木の円をスチーム曲木の「一本の線」へ。異国の伝統を北欧の感性で解体し、全く新しいモダンスタンダードへと昇華させました。


その美しさの核心は、緻密な「幾何学」と原始的な「生命感」の鮮やかな対比にあります。
まず目に飛び込むのは、上半身に集約された象徴的なフォルム。包容力を象徴する「円(アーム)」と、標識の様に視線を射抜く「逆三角形(Y字)」が、四角い部屋の静寂の中で強烈なアイキャッチとして機能します。
「止まれ」の標識や警告サインに逆三角形が使われるのは、それが本来「不安定で、緊張感を与える形」であるから。Yチェアは単なる椅子を超えて、図形が持つ根源的な安心感と緊張感を完璧に調和させています。
そして座面の「封筒編み」が描く4つの三角形は、土台となる四角い構造体から頂点のY字へと視線を導く完璧なガイドライン。この徹底的な数理的デザインが見る者の知性を刺激し、一目でそれと認識させるアイコンとしての格を与えています。


Yチェアは「上半身=キャラクター(象徴)」と「下半身=インフラ(構造)」で役割が分かれています。
座面から下の脚・貫の構成は、建築的な垂直・水平の「四角い世界」です。部屋の壁や柱、テーブルの脚と同じ「直線」で構成。下半分を空間の背景に溶け込ませ、あえて「普通」の構成にする事で、下半身を意識の外へと追い出している様です。
四角い座面を境に「視覚的ヒエラルキー(優先順位)」で分かれる「象徴と構造」。しかし全てが幾何学的であるかと思えば、それらと対照的にアームを支えるフレームには植物の様な「ゆらぎ」が息づいています。それは地面から生えた枝の様に、上に向かって微妙に太さを変え、有機的なしなりを見せています。この職人の手仕事による原始的なエッセンスが、幾何学の冷たさを打ち消し、椅子に「呼吸」を宿らせています。


離れて観察すれば、その計算し尽くされた構造美に感嘆しますが、ひとたび腰を下ろせば、分析的な思考はふわりと解けてしまいます。
木の曲線とペーパーコードの柔らかな弾力に身を委ねる時、人は「数理」の世界から「自然」へと還り、凪のような心地よさに浸ります。
ただの道具である事を超え、空間に「静かな緊張」と「深い緩和」を同時にもたらしてくれます。
熟練の職人が120メートルのコードで編み込む温もりと静けさ。分かれる背が、光を通し、風を通し、深いまどろみに誘います。


木の枝先に 意識を預け
現を忘れる 静寂を編む











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