Ahrend de Cirkel
Resort Desk Chair by Friso Kramer
ミッドセンチュリー期といえば、戦争によって生まれた新しい技術や素材などを、生活を豊かにするために活かそうと世界中のデザイナーが精力を尽くしていた時代。
イームズのシェルチェアをはじめ、今日まで愛され続ける名作が次々と生み出された「黄金期」ですが、オランダにも欠かせないデザイナーが存在します。
柔らかさと強さ
オリジナルのリザルトチェア(※SOLDOUT)
オランダを代表する工業デザイナー、Friso Kramer(フリソ・クラマー)。1950年代にウィム・リートフェルトと二人でデザインしたリボルトチェアやリザルトチェアに代表されるスチールを用いた機能的で美しい家具は、ダッチインダストリアルを象徴する名作として高い人気を誇ります。
今回ご紹介するチェアは、氏の手掛けた作品の中でもマイナーな、知る人ぞ知るリゾートシリーズのデスクチェアです。
製造元は、1940年頃に2つのスチール家具メーカー、De Cirkel(デ・シュルコ)とAhrend(アーレンド)が合併して誕生した、Ahrend de Cirkel(アーレンド・デ・シュルコ)社。当時フリソ・クラマーを専属デザイナー/アートディレクターとして起用し、名作リザルトチェアのオリジナルモデルを製造したことで知られています。
同シリーズには、リザルトチェアと同様のコンパスレッグタイプをはじめ、リボルトチェアやドラフティングチェアに似たベースタイプなどいくつかの種類が存在するようです。パブリックからホームユースまで、あらゆるシーンに対応できるようにバリエーションを作ったのだと考えられます。
国内のサイトにはキャスタータイプの販売記録がほとんど見つからず、インプションでも今回が初めての入荷となります。
着座時に触れる背もたれ・肘掛け・座面の全てにクッションを備えた、長時間の作業にも適したアプホルスター仕様。
それぞれのパーツが金属プレートによってしっかり支えられている為、包まれるような安定感のある座り心地を実現しています。
ハンドルを回しシートを上下させることで昇降できる他、360度回転するシートやダブルホイールによるスムーズなキャスターの動きなど、ビンテージらしいアナログなギミックを楽しめると同時に、デスクチェアとしての機能面も申し分ありません。
ファブリックは、コーデュロイ生地のように凹凸していて、ふんわりと柔らかい肌触り。また、くすんだピンクカラーが可愛らしく、スチールフレームのダークブラウンカラーと相まって落ち着いた雰囲気。
インダストリアルの無骨でハードな印象を和らげてくれていますので、男女問わず様々なテイストに合わせやすいと思います。
当時主流だった太さが単調な曲げパイプではなく、シート状のスチールを折り曲げることで、強度はそのままに、強弱のあるより自由なフレームラインを可能にしたフリソ・クラマー。
リゾートチェアもその技術を活かし、面と線のバランスの取れた力強くも柔らかいシルエットを生み出し、堂々とした存在感を放っています。
王道のコンパスレッグも良いけれど、こういったマニアックなアイテムはファンにとってはたまらない隠れた名作と言えるでしょう。