PP MØBLER
PP58 Final Chair
20世紀の北欧デザイン界で間違い無く最も著名とされる家具デザイナーであり、その後のモダン家具の世界に根底的な影響を与えた 巨匠 "ハンス・J・ウェグナー"。
氏が晩年にデザインを手掛けた傑作チェア「PP58」は、その生涯における経験の全てを注ぎ込んだという逸話から"FinalChair"とも呼ばれる特別な一脚です。
製作を手掛けた "PP MØBLER(モブラー)"社は、現存する家具メーカーの中でもハンス・J・ウェグナーと深い縁を持つ、デンマークの名工房。
世界的にも類を見ない程の拘り、そしてクラフトマンシップによって生み出された逸品を、是非この機会にご覧になっていってください。
"ものを作る者として"
1953年に、ピーターセン兄弟によって設立された"PP MØBLER"。
少数精鋭の職人が在籍する工房として代々家族経営がなされ、当初より様々なメーカーの家具のパーツを製造し、その品質が高く評価されてきました。
そんな中デザイナーである"ハンス・J・ウェグナー"直々の要望により、自社で一つの家具を製作するようになったのが1991年頃。
その後両者は2人3脚で家具作りを行うようになり、以降数々の名作を生み出しただけでなく、 "ヨハネス・ハンセン" や"APストーレン"といった名工房が廃業した際には、それまで製作してきたウェグナーの名作の製造権利がPP MØBLERへ引き渡される等、今日におけるウェグナーデザイン家具の生産において非常に重要な役割を果たしています。
元々生粋の木工家具職人であり、デンマーク公認のマイスター資格を持つ等、まさに"現場を知り尽くしたデザイナー"としても有名なハンス・J・ウェグナー。
PP MØBLERとの作業においても、オフィスではなく直接工房に行き職人とやりとりをする事が多々あったそうです。
氏はすっかり製作チームの一員になっていたと同時にその技術力の高さで尊敬を集めていたというのですから、ハンス・J・ウェグナーがどれほどに卓越したクラフトマンシップを持っていたかを改めて認識させられます。
また、PP MØBLER社とハンス・J・ウェグナーは、家具作の創造性・革新性を高める為に職人の手仕事だけではなく工作機械の使用を多く取り入れるようにしていました。
職人技と機械技術の融合を追求していた点でも強く共鳴しており、工芸における実験的な領域を追求する同志として、その関係はハンス・J・ウェグナーの生涯に渡って続きました。
さて、こちら「PP58」はハンス・J・ウェグナーがこれまでに得てきた輝かしいキャリアの晩年にデザインされた一脚。
まさに職人・デザイナー人生の集大成とされるこちらの作品ですが、ウェグナー氏が追求したのは、本当の意味で快適である事、そして実用的で、手に届きやすい価格帯である事。
そのシンプルな結論は、ウェグナー氏の人柄そのものであり、デンマークデザインの神髄そのものと言えるのではないでしょうか。
一目見て"ハンス・J・ウェグナーデザイン"である事を感じさせる、柔らかくカーブしたラインを持つ背もたれ。
ハーフアームとしての機能も兼用しており、肘と背中を適切にサポートしながらも自由な姿勢で使える、ウェグナー氏ならではの機能美です。
製作にはPP MØBLER社渾身のクラフトマンシップが存分に生かされ、樹齢 80~100 年の大木から切り出した一本の無垢材を、蒸気で蒸しながら数時間かけてじっくりと造形。
その後の調整に3~4か月を要してようやくこのアーム部が完成しますが、実はこれは余分に削られる木材を少なくする事で貴重な資源を守り、コストを抑える事にも繋げられています。
"ほぞ"で精密に接合された職人業も見事なもので、まさに手を尽くした製造工程と言えるでしょう。
その結果なんと1トンもの負荷にも耐える強靭な強度を得ており、どんな姿勢でも安定感のある座り心地をも実現しています。
使用されているのは、家具を始め高級な楽器にも好んでされる素材"アッシュ"。
美しく綿密な木肌がPP58の美しい造形を引き立てる事は勿論、手に触れる度にその充実感をより一層に高めます。
座面がペーパーコード仕様である"PP68"と比較すると、こちらはシートが本革となっておりシックな一面もお楽しみ頂けるのが魅力的なポイント。
ブラックレザーはアッシュ材特有の気品ある色味との相性も良く、心地よく空間映えし、経年と共に美しく磨かれながら贅沢な時間を演出します。
「PP58 Final Chair」如何でしたでしょうか。
美しささえ感じてしまう程にシンプルな構想、できうる限りが尽くされたこちらのチェアからは "ものを作る者" としての哲学、そしてウェグナー氏を含む家具職人達のあらゆる経験則が結晶となった、真に価値のある逸品と言えるでしょう。
巨匠 "ハンス・J・ウェグナー"が全ての人々へ贈る、渾身の一脚。
是非この機会にご検討頂ければと思います。