KS Mobelfabrik
ダイニングチェア No.32
サッカーの試合で、一番大きな歓声が上がる瞬間。それはやっぱりゴールが決まった瞬間です。
放たれたシュート。
揺れるネット。
地鳴りのような大歓声。
観客の誰もがその瞬間を覚えているでしょう。
でも、その少し前に目を向けてみると、試合を動かしたプレーがそこにはあります。
味方が攻め込むスペースを生み出したポジショニング。
相手の陣形を崩す1本のパス。
これらのプレーには一目見た瞬間にはなかなか気づけない、見返して初めて気付ける美しさがあります。
後から気づく美しさ

本日は、そんなじっくり見て、実際に使ってみることで次々と新たな発見がある椅子を紹介します。
それが、北欧家具の巨匠、カイ・クリスチャンセンが手掛けたダイニングチェア、No.32 通称ネイルチェア。
「この形は何のためにあるんだろう」
そんなことを考えながら観察してみると、たくさんの発見があります。

まずは、特徴的なハーフアーム。
名前の由来にもなったデザインは、ただの装飾ではありません。
椅子を引く時、立ち上がる時。自然と手をかけたくなる絶妙な位置。
テーブルに収まりやすく、それでいて肘を置いた時には自然と身体を支えてくれる絶妙な高さと長さ。
使う人の一歩先を考えた、気の利いた造形をしています。

次に、体を包み込むような背もたれ。
座る人の身体の動きを受け止めるように緩やかな曲線を描き、長く座っていても無理なく身体を預けられ、見た目以上のホールド感があります。

そして、身体を自然と受け止めてくれる座り心地。
丁寧に削り出されたハーフアームや、僅かに傾斜が付いた座面は、自然と体を理のない姿勢に導き、ゆったりと腰掛けることができます。
そのため、ダイニングチェアは勿論、読書椅子としてもおすすめです。

また、カイ・クリスチャンセンの作品に共通する、端正な佇まいも魅力のひとつ。
アームから脚先へと流れるようにつながるフレームは、直線と曲線が美しく調和した軽やかなシルエットを描いています。

ローズウッドが使用されているこの個体は、深みのある赤褐色の色合いと雄弁な杢目が、シンプルな造形の中に豊かな表情を与えています。
そして、艶やかな木部に対して座面にはファブリックを合わせることで、ローズウッドの持つ凛とした印象に柔らかな温かみが加わり、素材同士のコントラストも楽しめる一脚です。

ハーフアームの色がフレームと異なっているのも、この個体の魅力。
まるで椅子が本当にマニキュアをしたように見えるのが非常にキュートです。

一見すると、端正で美しいダイニングチェア。
しかし、No.32の本当の魅力は、じっくり眺め、実際に使ってみることで少しずつ見えてきます。
ハーフアームの絶妙な形状。
身体を優しく受け止める背もたれ。
何気ない動作まで考えられた細やかな設計。
どれも一目で強く主張するものではありません。
けれど、日々使う中で「ああ、よく考えられているな」と気づく瞬間が訪れる。
それは、試合を決定づける一本のパスのように、後から振り返ることで、その美しさに気づかされるものなのかもしれません。
見るほどに、使うほどに魅力が深まる一脚。実際に見て、触って、座ってみて、その細部に込められた美しさを感じてみてください。































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