これぞ神の手。
陶芸って難しい。体験で数回しかやったことはないのですが、土で思い通りの形を作るって意外にできないものです。
キャンドルドームを作りたかったのに、灯りの洩れる穴をあけすぎて焼きあがったら木っ端微塵になっていたり、綺麗に仕上げたはずの湯呑もなんだか想像とは違う仕上がりだったり。
ただ逆もあって、うまく成形できずにがっかりしていたお皿の歪なフォルムが味わいになることも。
そんなイチかバチかみたいなところも醍醐味だったりするのかもしれません(初心者の見解です)。
Pick up " GOD HANDS " items
それぞれの個性が光る作家さんがつくる器たち。難しさを実感するほど、さすがは本職と感服するばかりです。
が、上には上がいるもので、なんと神の手の異名をもつ陶芸家がいることをご存知でしょうか?
その名は、Berndt Friberg(ベルント・フリーベリ | 1899-1981年)。スウェーデンを代表する、いや北欧最高峰の陶芸家です。
没後も、世界中でコレクターたちが収集するほど高い人気を誇るフリーベリ作品(インプションでの取り扱いも初なんです)。
轆轤(ろくろ)による手作業で作られたとは到底思えない繊細で美しいフォルム。そして、オリエンタルな雰囲気をまとう釉薬の色彩。
とりわけこの10cmにも満たないミニチュアサイズの器たちの小ささを感じさせない完璧な仕上がりには驚かされます。あぁ、これぞ神の手。
ミニチュアボウル ブルー
四角のようで丸のような不思議なフォルムの小さなボウル。小鳥の餌やりにちょうどよいくらいのサイズです。
底部分の細かなところまでしっかりと手が加えられたデザインと深い海のようなグラデーションブルーが美しい逸品です。
ミニチュアベース イエロー A
形も色味もなんだかたまねぎみたい。そう思ったのは私だけじゃないはず。淡いイエローにグリーンが混ざり合う釉薬の美しさが際立ちます。
ちなみに、口先の内径はわずか3mm。お花を生けるとすれば、小さな野花が良さそうです。
ミニチュアベース イエロー B
この形が一番有名かもしれません。ぽってりボディの果実のようなみずみずしさを宿したフラワーベースです。
今回のミニチュアの中では最も大きい高さ8cm。内部を洗う良い方法さえみつかれば、これなら実用としても使えそうです。
おわりに
圧巻の小ささに見惚れるばかりではありますが、実はしっかりとサインが刻まれた底裏面も要チェック。今回は3点とも「Friberg」の文字とGustavsberg(グスタフスベリ)と思われるマークが彫られています。
そしてその傍らにある小さなアルファベットが製造年を表しているそうで、それぞれ1970年前後の作品だと思われます。ぜひルーペを片手にご覧ください。
自身のえんま帳なる手帳に釉薬の情報を細かく記録する色の達人。感覚的でありながら繊細で華麗な仕上がりを常に求めた完璧主義者。
神の手以外にもさまざまな異名が飛び交うベルント・フリーベリのこの小さな作品にもまた、「器の宝石」という美称がつけられています。
それほどまでに美しく見た者を虜にしてしまうミニチュアたち。神の作った器でありながら、親近感すら感じさせる温もりある宝石ばかりです。