松本民芸家具
220F型 ダイニングチェア
皆さんには、ふと懐かしい気持ちになるものはありますか。
私が真っ先に思い浮かべるのは、祖父母の家のリビングにある一本の大きな松の化粧柱です。
ごつごつとしていたであろう木肌は、何十年という歳月の中で家族の手に触れられ、つややかな飴色へと育っていました。子や孫の背比べの線、いたずらで付けた小さな傷、剥がしたシールの日焼け跡。そのどれもが、家族がそこに暮らした時間を静かに物語っています。
木は、使われるほどに美しくなり、時を重ねるほどに味わいを深めていく素材なのだと思います。
そんな「暮らしの中で育つ美しさ」を感じさせてくれる、松本民芸家具のダイニングチェアをご紹介します。
暮らしの跡が、美しさになる

松本民芸家具の歴史は古く、1944年、自然豊かな長野県松本市に木製格納庫の製造会社として設立されたことから始まります。
戦後は復興住宅や建具の製造を行う“中央構材工業”として活動していましたが、同社の設立者の一人である池田三四郎氏が、日本民芸運動の提唱者・柳宗悦氏の講演に感銘を受けたことをきっかけに民芸の道へ進むことを決意。
そして1948年、松本市の優れた木工職人たちと共に民芸家具の製作を開始し、現在まで続く“松本民芸家具”が誕生しました。


今回ご紹介するのは、北欧家具のシンプルなデザインから着想を得て作られた「220F型 ダイニングチェア」。
松本民芸家具の誕生当時から変わらず作り続けられている一脚で、民芸家具らしい重厚感を備えながらも、軽やかで美しい佇まいが魅力です。


外側のフレームには力強い太さを持たせながら、内側には細身の曲線を描くスポークを配することで、程よい抜け感を生み出しています。クラシカルな雰囲気を持ちながらも圧迫感を与えず、さまざまな空間に自然と馴染むデザインです。
また、座面には身体の曲線に合わせた座繰り加工を施すことで、板座でありながら柔らかな座り心地を実現。長時間の使用でも身体への負担を軽減し、日々の暮らしに寄り添う椅子となっています。


材に使われているミズメザクラは、「百木の長」とも称されるほど堅牢でありながら、光沢を帯びた美しい杢目を持つ魅力的な木材。
その杢目の中に現れる「虎斑」は、木が成長する過程で養分を蓄えた部分が虎の毛皮のような模様となって現れたもの。天然木ならではの個性であり、良質な材の証でもあります。
さらに、同社独自の塗料を8回以上丁寧に塗り重ねることで、使い込むほどに杢目は深みを増し、木肌は艶やかな表情へと変化していきます。
時を重ねることで美しさを育てていく松本民芸家具は、実用の中に美を見出す日本民芸運動の「用の美」を体現する家具と言えるのではないでしょうか。


和洋折衷な佇まいのため、和室・洋室を問わず自然と馴染む一脚。ダイニングやデスクに合わせるのはもちろん、書斎やリビングに一脚置くだけでも、空間に落ち着いた存在感を与えてくれます。
他の民芸家具との組み合わせはもちろん、オーク材やローズウッド材を用いたUKアンティーク家具、近い色味を持つミッドセンチュリーやモダン家具とも相性が良く、異なる時代や文化の家具が持つ重厚な趣を調和させながら、奥行きのある空間を楽しむことができます。

使い込むほどに艶を増し、暮らしの中で人の手が加わることで、少しずつ美しさを深めていく松本民芸家具。
祖父母の家の柱に刻まれていたように、家具もまた、使う人の時間や思い出を受け止めながら、唯一無二の表情へと育っていきます。
長い歴史の中で培われた職人の熟練した技術と、厳選された木材から生まれる「220F型 ダイニングチェア」。
良いものを永く使う豊かさを感じさせてくれる、そんな一脚です。































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