天童木工
低座椅子
日本人の業をもって作られるジャパニーズモダン。
人々の嗜好が北欧やモダンに変わっていった1900年代前半。
日本人の職人気質と西洋のデザイン力が合わさった時、ジャパニーズモダンと呼ばれる世界に通ずるスタイルが確立されました。
今回は我が倭国を代表する天童木工の作品をご紹介。
外国の加工技術と日本人の繊細な職人技術が融合した逸品です。
和洋折衷
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山形県のほぼ中央に位置する天童市。
木工業の盛んな街として知られる街で天童木工は1940年に創業しました。
当時の日本ではまだ新しかった成形合板技術。
この技術との出会いは後に国産家具の新たな地平を切り開くこととなりました。
良質家具の量産を可能にする成形合板。
世界で一世を風靡していたこの技術を日本でいち早く取り入れた天童木工。
優れた強度を持ちながら比較的安価で生産可能なこの技術は革新的なものでした。
ただ、単に丈夫で量産可能な作品を作り上げたわけではありません。
成形合板は滑らかな曲面を表現することが可能。
日本を代表する建築家やデザイナーとともに、無垢材では決して出せない複雑な曲面や美しいフォルムをもった家具作りにチャレンジし続けています。
こちらは、”天童木工 TENDO”の 『低座椅子』 。
ジャパニーズモダンを象徴するデザイナー長大作が、坂倉準三建築研究所在籍時代に手掛けた逸品です。
日本建築界を代表する建築家・坂倉準三の設計した空間に、調和する様手掛けられた低座椅子。
「和室でのくらしに違和感なくとけ込み、ゆったりとくつろげる椅子に座りたい」という要望を叶えるべく、この椅子が誕生しました。
ナラ柾目のプライウッドは木の風合いと加工技術による滑らかな曲面の両立を実現しております。
例えば、有機的な印象の背もたれと座面。
柿を切った際の断面からインスピレーションを受けたそう。
優れたプライウッド技術により、まさに果物のような優美で独特な曲線美を体現しています。
直線的な脚部と有機的な曲線を描く背と座の意匠上のコントラスト。
曲線と直線を織り交ぜた脚。
カタツムリを思わせる今にも動きだしそうな躍動感と存在感があります。
このソリのような脚。実は、畳や絨毯を傷めないよう、ほどよい幅を持たせた直線的な構造になっています。
デザインのみならず。周りを思いやるその心はまさに、日本の『おもてなし』。
たっぷりとしたシートと低く設計された座面、そして後傾デザイン。
足を投げ出した姿勢で座れ、あぐらもかけるのでリラックスした状態で座ることが可能です。
日本特有の床に近い生活では、座椅子に座布団を合わせた少々娯楽性に欠けた暮らし方が一般的でした。
低座椅子の台頭は日本の住宅事情は大きく変え、日本人の暮らしをより快適なものに進化。
課題に真摯に取り組んだ天童木工と長大作が生み出した、ジャパニーズモダンの大きな成果といえるでしょう。
環境に依存せず存在感を放ち続ける和洋折衷の美。
ジャパニーズモダンは今でも尚、世界で評価される魅力を持っています。
旺盛な探究心と確かな技術力、そして東北人特有の辛抱強さ。
日本人の暮らしに真摯に向き合った思いやり。
次世代に受け継がれ財産として残り続けることかと思います。