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Panton Chair
ここ数日は寒い日が続いていましたが、今日は少し寒さが緩んだように感じられます。
いつもであれば自転車で凍える指を守る手袋がいりませんでした。
個人的に「冬来りなば、春遠からじ」という言葉が好きです。
洋服を掻き合せて震えている間にも桜がわずかな熱を蓄えてツボミを膨らませていくように、ただ一日を消費しているのではないと思えるのが素敵だなと思っています。
(※出典元を知らずにいたので調べてみると、イギリスの詩人による詩の一節だそう。今は辛くとも耐え忍んでいれば幸せは必ず訪れるという意味らしいです。)
とはいえまだ2月も3月もありますので、暖かくして元気に過ごしていきましょう。
本日紹介させて頂くのは、デザイナーズのアイテムの中でもトップクラスの知名度を誇る1脚です。
よろしければ最後までお付き合い下さいませ。
思いを貫き通す大切さ
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パントンチェア。デンマーク出身のデザイナー、ヴェルナー・パントン(Verner Panton、1926~1998)によって作り出された1脚です。
そこにあるだけで他にはない存在感を感じさせます。
パントンチェアの特徴は世界で初めてプラスティックで作られた一体成型で作られた椅子であること。一般的な椅子は、複数のパーツを組み合わせて荷重に耐える構造を作り上げてゆきますが、パーツを組合わせるためにそこに「境目」が出来ることは避けられません。
この椅子は全てを一体に成形することでその問題を克服しており、有機的な印象を与える自然な「曲面」を、人間のような「一つのもの」として再現することに成功しているのです。
構造はカンチレバーと呼ばれる片持ち梁(ばり)。通常椅子は3~4本の脚で、体重を分散して支えますが、この椅子は後ろに大きく伸びるU字の脚1本でそれを支えています。腰を掛けることで体重がかかる真下に空間を作り出すことで、重力に逆らうような緊張感が生まれているのです。
座った際も、椅子が全体で体重を受けて気持ちよくしなるため、快適にお過ごし頂けます。
北欧の家具では良く引き合いに出される「リ・デザイン」。パントンもその例にもれず、過去の名作を掘り下げ、より時代にあったかたちに洗練しています。
デザインの系譜として挙げられるのがトーマス・リートフェルトのジグザグチェア(1930年代前半)。それに加えて、1950年代初頭に勤務していたアルネ・ヤコブセンの事務所でアントチェアの製造に携わったことで経験した、アントチェアと同じ成形合板を用いたSチェア(1956年デザイン)。
Sチェアはデザインは1956年ながら必要な強度を得ることが難しかったのか、発売は1965年と約10年の歳月をかけています。
世界初の一体成型の椅子と呼ばれるパントンチェア。新しい発想を形にするためには、さぞや多くの試行錯誤があったことでしょう。名作と呼ばれ、比較的リーズナブルなために目にすることも多いアイテムですが、その裏側には長年の「出来なかった」が積み重なっています。
素材も初期のFRPから5度の変更がなされています。こちらのアイテムは環境負荷の少ないポリプロピレン樹脂100パーセント。耐候性にも優れており、幅広くお使い頂けるようアップデートしています。
もともとは画家志望であったというパントン。
己の中にある根源的な「こうしたい」という気持ちを忘れずに実現するまで続けていたことで、デザインからポップなカラーリングまで、他に並ぶことのない選択が出来る名デザイナーになりました。寒い季節を耐え忍ぶ桜のように、日々を着実に積み重ねた結果がアイテムとして私達のもとへと届いているのです。
初めてのデザイナーズアイテム入門としても、スタッキング仕様なので複数色を重ねて楽しむ、なんて使い方もオススメです。
お気になる方は、どうぞこの機会にご検討下さいませ。