MOROSO
"Three Skin Chair" designed by Ron Arad.
木の家具には、木らしい形というものがあります。
けれど、この椅子を見ていると、そんな「木らしさ」のイメージが少し変わってきます。
一見すると、椅子というよりも大きなオブジェ。
木製の椅子と聞けば、四本脚に座面、背もたれといった姿を思い浮かべますが、今回のものは全ッ然違います。
大きく湾曲した木の板が、まるで身体に沿うように流れながら、そのまま椅子になっているかのよう。
家具を見ていると、「これ、どうやって作ったんだろう?」と純粋に気になるものがありますが、今回ご紹介するMOROSOの「Three Skin Chair(スリースキンチェア)」は、まさにそんな一脚です。
~椅子として見るか、オブジェとして見るか~

MOROSOは、1952年にイタリアで創業した家具ブランド。
クラフトマンシップを大切にしながら、世界各国のデザイナーと協働し、実験的な素材使いや個性的な造形を取り入れた家具を数多く生み出してきました。

そんなMOROSOと長年にわたり協働してきたのが、イスラエル出身の建築家・デザイナー、ロン・アラッド。
1989年の「Big Easy(ビッグイージー)」をはじめ、「Victoria and Albert(ヴィクトリア&アルバート)」や「Little Albert(リトルアルバート)」など、素材の特性を活かしながら、従来の家具にはない大胆な曲線やボリュームを持つプロダクトを手掛けてきました。
↑是非調べてみてください。

なかでも「Victoria and Albert」は、ドーナツのような輪郭を思わせる大胆なフォルムが特徴的なソファ。
さらに「Little Albert」では、その有機的な造形をコンパクトなアームチェアへと展開しています。
こうした作品を見ると、アラッドが家具を単なる機能的な道具としてではなく、素材そのものの可能性を引き出す「造形」として捉えていたことが感じられます。

そして2004年、そんな彼がMOROSOとの仕事で初めて木材を用いてデザインしたのが「Three Skin Chair」です。
3D曲げ加工を施したブナ材の積層合板によって、3つの大きな曲面が一体となったような独特のフォルムを形作っています。
Big Easyでは「塊」として、Victoria and Albertでは「曲線」として、そしてThree Skin Chairでは「木の面」として。

個人的に惹かれるのは、やはりこの流動的なシルエット。
パントンチェアを思わせるような一体感がありながら、Three Skin Chairはより彫刻的です。
背もたれ、座面、脚部という椅子の要素が明確に区切られず、ひと続きの曲面として立ち上がっているように見えます。
その大胆な造形と、3つの曲面の間に生まれる大きな「曲面の間に生まれる空間」が、とても興味深いんですよね。

しかも、見る角度によって印象が大きく変わります。正面からは椅子としての姿が見える一方、斜めから見ると複雑な曲線が重なり、まるでオブジェのような表情に。
木材という一見すると加工の自由度が限られそうな素材から、ここまで有機的な形を生み出しているところにも、アラッドのデザインの面白さがあります。

Three Skin Chairを眺めていると、「椅子はこういうもの」という先入観が少しずつほどけていくような感覚があります。
背もたれ、座面、脚というパーツを組み合わせたものではなく、3つの大きな曲面がそれぞれに存在しながら、ひとつの椅子として成立している。その姿は、家具と彫刻の境界さえも曖昧にしているかのようです。
座ってみるだけでなく、少し離れて眺めたり、角度を変えて見てみたり。中央に生まれる大きな空間や、曲面の重なり方によって表情が変わるので、置いてあるだけでもつい目を向けてしまいます。
実用のための家具でありながら、眺めることそのものも楽しませてくれる。Three Skin Chairには、そんな家具の面白さが詰まっているように思います。
椅子として見るか、オブジェとして見るか。そのどちらとも言い切れないところこそ、この一脚の一番面白いところです。































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