Victor
NIPPER
ものやデザインの背景には必ずと言っていいほど物語があります。
どのように生み出され、何がきっかけになったのか。
デザインの魅力はデザイン自体に宿る為、そのままのストーリーを植え付けることはできません。
強い意思が込められていたとしても全ての人に伝わるとは限りませんし、分からないと一蹴されてしまうことも。
しかしこの怪訝そうな表情には多くの人が何かを感じ取ったのではないでしょうか。
最も有名な犬
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本日ご紹介させて頂くのは日本ビクターオフィシャルのビクター犬のルームランプ。
蓄音機に耳を傾けたこの犬の姿はあまりにも有名でイラストやロゴ、フィギュアなど様々なシーンで見かけるアイコン的存在です。
この犬の名前はニッパー。
現在ではキャラクターとして愛されているビクター犬ですがモデルとなったニッパーは実在するフォックス・テリア系の犬です。
ニッパーを描いたのはイギリスの画家フランシス・バラウド。
フランシスの兄、マーク・ヘンリー・バロウドに飼われていた犬がニッパーでした。
マークは非常に賢いニッパーを可愛がっていましたが1887年、病気により命を落としてしてしまいまいます。
その後ニッパーはフランシスに引き取られることになります。
彼は家にあった蓄音器で吹き込まれていた兄の声をニッパーに聞かせました。
ニッパーは怪訝そうな顔で蓄音機のラッパに耳を近づけ懐かしい飼い主の声に聞き入る様子だったそう。
フランシスはその様子に心を打たれ一枚の絵を完成させます。
それが「His Master's Voice」、後のニッパーと蓄音機のビクターマークでした。
フランシスはエジソン・ベル社にこの絵を持ち込みましたが、「犬は蓄音機を聞かない」と一蹴。
破談してしまいます。
その後グラモフォン社の社長に買い取られ日の目を見ることになりました。
亡き主人の声に耳を傾けるニッパーの可憐な姿は、円盤式蓄音器の発明者、ベルリナーをも感動させたそう。
書き直しやリデザインを繰り返しながらも変わらないニッパ―の特有の表情と雰囲気。
立体物になることで魅力が損なわれることもありますがこちらのニッパ―はそうではありません。
実寸に近づけられデザインされたということもあり、どこか哀愁を感じさせます。
どこか悲し気な表情はニッパーのモデルとなった絵画からそのまま抜け出してきたかの様。
愛され続ける理由はニッパ―自身の物語にもあります。