Sacea italy
SNAKE Flexible partition wall
早いもので9月の初旬も終わりに差し掛かっています。いつも通りかかる道に立派なお宅があり、そこから覗く草花が四季を感じるきっかけの一つな私。
今日その前を通りすぎた時には金木犀の香りが。例年なら早くとも9月の終わりくらいなイメージだったので少し驚いています。
いつも変わらない日常だから、ちょっとした違いに新鮮な気持ちを感じる事ができる。
今回はそんなアイテムのご紹介。宜しければ最後までお付き合い下さい。
イタリアで咲いた花
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今回はイタリアモダンを代表するブランド、カッシーナにて取り扱われていた、サチア社のパーテーション。
デザインは細江 勲 氏。1942年生まれのイタリアを中心に活躍したデザイナーです。
日本大学の大学院航空工学科では航空力学を学び、日本発の人力飛行機リネット号の開発に携わった後にイタリアへ。2015年にお亡くなりになられるまで活動拠点はイタリアを中心としていたため日本に多くの情報が入ってくることはありませんが、その実績には素晴らしいものがあります。
共同した企業をパッと並べるだけでもアルフレックス、カッシーナ、カルテル、トネリ、ビルメンと言ったファニチャーメーカーから靴のアウトソールで有名やビブラムや車のフィアット、日本でもイトーキから富士通、三菱と錚々たるメンツ。
日本のグッドデザイン賞はもちろんコンパッソドーロやIF賞、レッドドットやパリのポンピドゥー・センター、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に永久展示品があるなど世界的に評価されている事の分かるデザイナーの一人です。
主な活動が1960年代後半からという事もあってか細江氏のデザインしたアイテムは、全体的に遊び心のあるポストモダンの雰囲気。
伊セジス社のプリーズチェアのように自然物が持つ有機的なフォルムを敢えて規則正しい線にデフォルメしたアイテムがあると思えば、ヘビランプのようにインダストリアルなイメージの素材を前面に出したようなアイデア光るものも。カッシーナのオスカー テーブルはガラスから人参が生えたよう。興味があれば是非チェックを。
生き物の様な無機物。ただ人に使われるだけの家具ではない、新しい価値を模索していた事が感じられるアイテムが多い印象です。
そんな中で今回はパーテーション。名前はスネーク。
先ほどのヘビランプのように生き物の名前をストレートに付ける事の多い細江氏ですがヘビには何か特別な愛着があるように感じられます。
パーテーション。衝立(ついたて)とも呼ばれ、主にエリアを区切る為に使われるアイテム。一般的なものであれば大きな板の両端に脚が付いて、大きな屋敷の玄関口やオフィスのミーティングスペースで使われるイメージです。
空間を仕切るというシンプルな目的ため装飾的な部分は少なく、「面」をどのように作り出すかという事が主なポイントとなります。
細江氏が1985年に出した答えは多関節。小さな板を複数並べて面とするというアイデアはイームズやアルヴァ・アアルト等でも見られますが、細江氏が選択したのは板ではなく筒。
PVC製のシリンダーを並べる事でより凹凸感のある面を作りました。直径9センチほどの筒は板と比べてそれ自体に安定性があり、また中空であるため大きさの割に持ち運びしやすくなっています。
上下にある連結用パーツによって繋げられている本体は1本ごとに取り外しが可能なので、お好みの長さで使う事が出来る面白い機能。
巻いた時に見えるパーツはどこか爬虫類の背骨のようでもあります。
また、使用しない時には丸めて収納出来るのは言わずもがななメリットです。
ほんのりツヤのあるPVC素材のパーテーション。ホワイトカラーなので悪目立ちする事はありませんが、屋内で使用すると流線形が近未来を連想させるように、良い意味で違和感のある雰囲気をもたらしてくれます。
また、使用例として屋外で撮影された画像があったのですが、青い芝の上、白いダイニングセットを白いスネークで覆い隠していた風景は、どこか世間の喧騒から離れた秘密の園を守っているようでもありました。
空間を上品に切り離し、特別なものにする。機能としてはシンプルですが大切なシーンを演出してくれます。
日本という地を離れて、言語や習慣の違いを乗り越えて活躍した細江氏。同じイタリアで、同じようにイタリア人がデザインを手掛けてもやはり何かが違う。
それは日本人の精神性なのかも知れませんし、細江氏個人のパーソナリティももちろんあると思います。ですが何よりも誰かのために問題を解決する「デザイン」の力。
それが時間が経った今でもアイテムをここに存在させてくれているような気がするのです。
言葉を話しませんが、今に残り静かに存在感を放つパーテーション。お探しの方はこの機会にいかがでしょうか。