arflex
POND Center Table
こんばんは。風薫る五月とは良く言いますが、気温や湿度が徐々に上がり、様々な匂いをすれ違い様にも感じるようになってきました。
今が盛りの花々や、肥えた土の匂い。街角で流れる惣菜やコーヒー豆の焙煎の匂い、黄砂が多く飛ぶ日や運動会等で感じるちょっとした砂っぽい匂い、粉っぽくなったフェンスに触れた手の金物臭さ。マスクで返ってくる自分の息の匂いなんてものも有ります。今日は乾燥注意報なんかも出ているようですが、これから日を追うごとに生々しい、生きている匂いを感じる季節になってきます。
日々の生活はにじりにじりとすり寄るように新しい生活の方向へと向かっているように感じます。どのように着地をするのかはまだ分かりませんが、今辛抱している「普段」の大切さや、自粛をしている中で感じる人の思いやりを大事に感じて頑張っていきたいと感じるこの頃です。
今回ご紹介するのは、家具をアイコニックな形にしながらも、邪魔にならず、大切な日々のためにある逸品です。
宜しければ最後までお付き合いください。
無機と有機
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今回ご紹介するのはモダンデザインを牽引するアルフレックス(Arflex)社のセンターテーブル。
出自こそ1951年イタリアにさかのぼりますが、よく謂われるのは「日本育ち」である事。1967年に後のアルフレックスジャパン会長を務める保科正氏が本社の門戸を叩き、工場での製造ノウハウや極東での販売権を持ち帰国。元々あった素晴らしい家具の輸入だけではなく、新しく自らが家具を企画製造を行い販売する事をスタートさせたのです。
一昔前では応接室の置き家具のイメージであったソファを、現在のような家庭にある寛ぎの象徴としたのは 、アルフレックスの功績とも言われています。
デザインはAnna von Schewen(アンナ・フォン・シェーヴェン)。家具大国スウェーデン出身の女性デザイナー、建築家です。
デパドヴァ社やザノッタ社等での家具のデザインや、日本のスウェ―デン大使館で単独の展覧会を開催するなど活躍著しい彼女のデザインは、シンプルな中にもひとひねりのユーモアが効き、多様なライフスタイルに沿うようなチョイスが出来る楽しいプロダクトになっています。
トレイが脚部に載っているような形に感じるのは、中央のガラス天板と独特のフォルムによるもの。
光を通し軽やかさを感じさせながらも、用いられているブラックウォールナット材と同系統のダークブラウン色のガラスを選択する事で纏まりのある雰囲気を感じさせています。
フレームは3次元による削り出し。いびつさを極力排除したフォルムは現代の技術を採用する事で生まれ、生活の風景の邪魔にならない潔さを表現しています。
イタリアの家具を見る上で良く感じる「潔さ」。
それは家具では良く引き合いに出される、北欧のそれと異なる「有機」と「無機」の切り離しにあると感じます。
例えば北欧の名デザイナーによる、ハンドクラフトの一品。それが「直線」や「曲面」といった言葉の概念では説明しえない有機的な、人間臭さを持っていると仮定するなら、イタリアのそれはモノに寄りかかる事なく、人が使う無機な「物」と割り切っているスマートさがあります。
その国全体に通じるデザイン姿勢は、空間をグラデーションの様に彩るのではなく、モンドリアンの抽象画の構図のように切り取る力を強く持っています。
イタリア生まれ日本育ちの家具ブランドが、多様なライフスタイルに沿うデザインを得意とする家具王国のデザイナーと、生活に使う「物」として造ったテーブル。とても現代らしく素敵だと思います。
どのように使うのかはその人のアイデア次第ではありますが、良質な無機「物」を置いて生活するからこそ、いつもの空間にある「匂い」に気が付ける。そんな気がします。
気になった方は是非、一度ご検討下さい。