Kashiwa
CIVIL Easy Chair
少し前に最寄りの駅で見かけたツバメの巣から、早くもヒナたちが巣立っていったようです。今朝柱の上に作られた巣を見上げると、もぬけの殻になっていました。
親鳥によって巣が作られ、少しブサイクで可愛らしいヒナたちが甲高くエサをねだり、大きくなったヒナが飛行訓練をして少し離れた所でジッとしている姿。毎年変わる事のない営みの様子です。私は年々それを懲りずに眺めるのが好きになっています。
日本に住む私たちが、漠然と「森」をイメージするとどんなものが思い浮かぶでしょうか。海外の森と違って見通しの良いものではなく、密集した木々の中で、木こりの音が急峻な山奥深くまで響いていくような森。そんな景色を思い浮かべる人は少なくないと思います。
本州の中心、飛騨高山には幾星霜の昔からそんな景色があり、連綿と現在まで続いています。今回ご紹介するのは昔から変わらない日本の森と共に暮らし、モノを作り続けた人々の「こころ」を感じる事の出来る逸品です。宜しければ最後までお付き合い下さい。
日本を表す飛騨のこころ
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今回ご紹介するのは柏木工のイージーチェア。柏木工は飛騨高山に昭和18(1943)年創業の70年を超える歴史を持つ企業です。戦後間もなく曲木技術を使用した南京椅子(トーネットスタイルのスツール)や、ウィンザーチェアの製造に着手し、その初期はアメリカ向けの輸出品を多く製造していたようです。
現在はオリジナルブランドでの製造が中心ですが、IDC大塚家具のOEM生産を担当する等その技術力は高く評価されています。
シリーズ名はシビル(CIVIL)。日本の暮らしにおける新しいスタンダードを目指しデザインされました。2000年代はじめのデザインながら徐々に人気を博し、2014年にはサイドチェアがグッドデザイン賞を受賞。今では現代「日本」の椅子を代表するものとして海外への輸出もされています。
スポークバックの、ウィンザーチェアの様式を踏襲しながらもストレートなシルエットが独特です。笠木は鳥居のようにほぼ真っすぐに用いられているのがより日本らしさを深めている印象です。横から見ると美しいハサミをみるような交差したカタチ。傾斜が大き目に付けられていますが、しっかりと組み合わされたフレームがしっかりと体重を受け止めます。
徐々に細くなっていくアームの先端はコンパクトで握りやすく、起き上がる際も楽に力を掛ける事が出来ます。根元は最大で10センチの幅がとられているので安心して腕を預ける事ができ、不便の無いようにバランスがとられています。
材質はナラ(オーク)材。ウェグナーの椅子等に代表されるように美しい木目の表情が人気ですが、水分量が多いため乾燥には時間と熟練を要します。柏木工では最低でも半年から1年ほどの天然乾燥、2週間の追い人工乾燥を経た木材を使用しています。
座のクッションは備え付けで、専門の職人がつど手作りで縫製しているもの。背面のクッションは高さの調節も出来ますので自分のジャストサイズに変更出来ます。
一般的に「飛騨家具」と呼ばれるものは飛騨デザイン憲章というものに基づき造られています。
それは「自然との共生」「人がつくる」「心の豊かさ」「伝統を生かす」「永続性」という5条から成り立っています。
現在の自分達が今立っているその地域の特色を理解し、そのバックボーンを活かして今現在の人々のための良い品を模索し続ける。
今私たちが目にする事の出来る飛騨家具は、伝統を受け継ぎ、超える物を目指して切磋琢磨された結果なのです。
遡れば日本最古の歌集万葉集にも真摯に墨引き(木材に設計の線を引く作業)をする職人の姿が詠われる飛騨高山。大きな寺社仏閣が造られる際には飛騨の「匠(たくみ)」は欠かす事が出来ず、派遣のために税が免除される程の腕前だったとの事です。時代に求められるものを森と共に作り続けた地域だからこそ出来た名品。お探しの方はどうぞこの機会にお求めください。