赤松功
欅無垢材 オープンシェルフ
侘び寂びを知ったのは、小学生のとき。近所のおばあちゃんが先生の茶道教室でした。
心を写す鏡柄杓(かがみびしゃく)、季節の名前をつける茶杓の銘(ちゃしゃくのめい)などいまだに覚えている所作の数々。といってもたかが10歳前後。当時はおいしい習い事くらいにしか思っていませんでした。
ただ、ひとつひとつの日本の美意識は少しばかりは自分の糧になっているような気がします。
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とはいえ、大人になった今でも侘び寂びを理解しているわけではありません。ちょっと感じるようになっただけ。
例えば、今回ご紹介するこのシェルフは見た瞬間にそれを感じました。
枯れた木味と荒れた杢目。飾り気はなく、自然のままの姿を残した欅無垢材本来の力強さを楽しむ。
奥深さがみなぎるそんなシェルフを手掛けたのは、現代アーティストの赤松功(あかまついさお)氏です。
もともと石彫をメインに活動していた同氏が、木工へ転換するきっかけとなったのは病だったそう。
より軽く、扱いやすい素材へ。アグレッシブに没頭する作り方から、自分のやり方=個性を大切にした制作へ。それは、作品づくりに対する向き合い方を転換するきっかけでもあったようです。
そこから生まれた「作りすぎない」感覚。伐採された木材や取り壊された家の資材を使い、丸太や枝を家具に生かす。
自然の中に存在する“ いつもの風景 ”がそのままあるからこそ、生まれる不安定さ。不安定だからこその魅力。
決して滑らかとはいえない木肌には、たくさんの節や亀裂、穴が存在します。先ほど、飾り気はないと書きましたが、実際は木材こそが天然の装飾。唯一無二のデコレーションです。
いびつだからこそシェルフにのせるアイテムの大きさや形に気を配りながらディスプレイする。既製品では味わえないそんな手間さえも楽しみたいと思わせてくれます。
シェルフという使命を与えられた自然の木材に立体物が加わることで増す情感。そして、あえて洋のインテリアの中に取り入れることで引き立つ情趣。
他の家具や雑貨と共にあることで、より生き生きとした生命感を感じて頂けるはずです。
「語りかける椅子」や「風景が見える椅子」など同氏の家具は、どのネーミングもアーティスティック。でも名付けられているのはほんの一部で、ほとんどの作品は無題というから驚きです。
実際に、このシェルフも残念ながらノータイトル。それでもここまで書いているうちに思い浮かんだ名前があります。生命を貫く書棚。勝手に名付けたくなるほどに、むき出しの生命力がみなぎっているのです。
いつか持ち主になる日が来たら、皆さんもぜひ素敵な名前をつけてみてはいかがでしょうか。