vitra
Landi Chair
背もたれから座面までがひと続きになったチェア。
日常の中にすっかり溶け込んだそのフォルムですが、実はかつてデザイン界に革命をもたらした存在でした。
今回ご紹介するのは、20世紀のデザイン史において重要な位置を占めるクラシックな一脚です。
軽やかに、静かに
1950年創業、スイスの家具メーカー「ヴィトラ vitra」。
世界中の名だたるデザイナーとタッグを組んで、数々の名作を送り出してきました。
イサム・ノグチの「コーヒーテーブル」、ヴェルナー・パントンによる「パントンチェア」など、時を経て受け継がれてきた名作デザインから、現代のデザイナーたちによる最新作まで、ヴィトラの豊富なコレクションは世界中で愛されています。
今回ご紹介するのはミニマルデザインの隠れた名作、「ランディチェア(Landi Chair)」。
1938年にハンス・コレーというスイスのデザイナーによって生まれました。
金属加工を独学で学び、バウハウスで培った感性を形にした一脚。
当初は1939年にチューリッヒで開かれたスイス国際博覧会のために、自身初の量産できるチェアとして発表されました。
このチェアの魅力は素材感と重量。
当時非常に珍しかった板状のアルミを圧縮し、驚くほど軽量に設計されています。
計91箇所のパンチング加工にはバウハウス時代独特のセンスが宿ります。
無駄の無い造形と素材特有の気品ある佇まいは非常に印象的です。
構造もまた斬新で、工業デザインの美学が存分に感じられます。
背と座が一体化した三次元成形のシートが、2本のU字型ベースに支えられる設計。
屋外にも対応し、スタッキング可能という機能美も見逃せません。
90年という時の流れを経ても、古びないデザイン。
必要な要素だけを残した潔さは、むしろ今の時代にこそ響きます。
あなたの空間にも静かに寄り添ってくれる「用の美」を体現した一脚のご紹介でした。