vitra
Standard Chair by Jean Prouve
スタンダード-Standard- (基準,標準,規格)。
よく「一般的なもの」という意味や「比較や評価の基礎となるもの」といった意味で使われることが多い言葉ですが、基礎や基準という言葉から何となく「一番初めに生まれたもの」をイメージする方も少なくはないと思います。
だからといって一番初めに生まれたものが完全なる軸や基礎になっている訳でも無く、何かを積み重ねた先や熟考した先に生まれたものが軸や基礎となり、スタンダードなものとして広がり評価を得るものだと考えます。
本日はそんな「スタンダード」という言葉に相応しい、フランスの名デザイナーが生み出した名作チェアのご紹介です。
追い求めた先のスタンダード
今回ご紹介させて頂くのは、スイスの家具メーカー“ヴィトラ Vitra”社より“スタンダードチェア Standard chair”。
デザインを手掛けたのはフランスの建築家"ジャン・プルーヴェ Jean Prouve"。
建築生産の工業化に大きな役割を果たし、1937年のパリ万博にはル・コルビュジェやピエール・ジャンヌレと共同製作したバスルームを出品するなど、世界的に活躍したデザイナーの一人。
自らを建築家でもなく技術者でもない「工人」と語り、“合理的で無駄のない構造”を追求するモノづくりへの姿勢と哲学が、数々の名作を生み出しています。
代表的作品として認知されているスタンダードチェアは、1934年よりプルーヴェの手によって熱心な研究と幾重もの試作のもと誕生。
3つの試作品を経て4番目のチェア「No.4」と名付けられた椅子が現在のスタンダードチェアの原型となっており、1950年の「No.4」以来、研究が続けられた象徴的な椅子は1950年にスタンダードの名を冠し、アトリエジャンプルーヴェにて発売されます。
2000年代初頭のフランス国外において建築家やコレクターなどのごく一部の人々にしか知られておらず、それまでひっそりと隠れた名作チェアとして一部の熱狂的なファンに知られていたスタンダードチェア。
2002年にヴィトラ社が復刻したことがきっかけとなり、美しい構造と快適な座り心地が多くの人々に認知されることになります。
このチェアの一番の特徴と言えるのは前後非対称な脚部。
比較的負担の軽い前脚は細いスチールパイプ仕様に、幅広の三角形の後ろ脚はデザイン性だけでなく、椅子に座った際に後ろ脚に最も負荷がかかるという椅子の本質を見抜いてこの形となりました。
より大きい負担を支えるために中空の鋼板を採用し椅子への負担を軽減、深く座った時に最も負荷がかかる座面の位置を特に太くし、座面から背にかけて脚が細くなることで、寄りかかりやすい角度を実現するなど、後ろ脚ひとつをとっても細部までこだわって作られていることがわかります。
背もたれと座面にはプライウッドを採用。
座面前部は腿に沿うよう大きめのカーブ、座面中央には浅めの窪みが付けられており、身体に沿うように付けられた緩やかな曲線は安心感のある座り心地を実現しています。
沢山のカラーバリエーションのありますが、今回の入荷は温かみのあるナチュラルオークと、少し濃い朱色のようなジャパニーズレッドの組み合わせ。
どちらのカラーも日本人にとっては馴染み深いものであり、ほんわかと落ち着く事が出来るカラーリングとなっています。
ミッドセンチュリーや北欧スタイル、ナチュラルテイストや和モダンな空間など様々なインテリアテイストにも合わせやすく、幅広いシーンで活躍してくれます。
スタイリッシュで無駄のない魅力的なデザインでありながら、実用した際の座り心地や使い手のことを考え抜いて作られた構造のスタンダードチェア。
デザインから半世紀以上経っても衰えない人気が、この"スタンダード"という名前に嘘は無い事を物語っています。
その座り心地とジャン・プルーヴェのこだわりを是非、ご自宅で体感してみてはいかがでしょうか。