LLOYD LOOM

Daining Chair

ラタンはその通気性と耐久性で知られるものの、デザインにはどうしても限界がある素材です。

そんな課題に挑んだあるブランドは、伝統的な技術を進化させ、新たな素材を取り入れることで突破口を見出しました。

今回ご紹介するのは、英国が誇るクラシックな逸品、ロイドルームのチェアです。

異素材が織りなす伝統と革新

ロイドルームの物語は、今から約100年前の1917年に始まります。

アメリカ人デザイナー、マーシャル・バーンズ・ロイドは、従来の籐に代わる画期的な家具を生み出しました。

一見すると籐のような質感を持つこの家具、実は素材に紙を使用しています。

防水加工された特殊な紙をスチールワイヤーに巻き付け、耐久性を確保した革新的な製法です。

こうしてロイドルームは、新しい時代を象徴する家具として誕生しました。

1922年、ロイドルームはヨーロッパで製造ライセンスを取得し、販売を開始しました。

当時の英国はヴィクトリアン様式の華やかさが支配的でしたが、紙とワイヤーという異色の素材の組み合わせが挑戦的であると同時に、英国の伝統的な優美さを見事に表現。

籐では成し得ない繊細でエレガントなデザインが、英国のみならず世界中で注目を集めるようになったのです。

ロイドルームの家具は湿気に強く、ガーデニング用として愛用されることが多かったことが特徴です。

しかしその快適な座り心地が認められ、やがてウィンブルドンのロイヤルシートや豪華客船、さらには飛行船まで、あらゆる場所で使用されるようになりました。

時代を超えて進化を続けるロイドルームは、100年を経た今もなお、その人気を失うことはありません。

今回入荷したのは、希少なヴィンテージ。

ハーブのように清々しいグリーンのカラーは、絶妙に時代感を纏い、籐の家具を思わせるしなやかさを備えています。

剥がれたペイントの下から顔を覗かせる下地が、現行品にはない深みを醸し出し、一つとして同じ表情を持たない唯一無二の存在感を放ちます。

軽量で持ち運びが容易なため、普段は室内で楽しみつつ、晴れた日には外に持ち出してゆったりとしたひとときを堪能できます。

心地よさと安定感を兼ね備えたデザインが、贅沢な寛ぎの時間を演出。

自然体でありながら、どこか上品さを漂わせる一脚のご紹介でした。