Fritz Hansen

T Chair

時代を超えて人々を惹きつけてやまない、真のデザイン。

それは、ただの椅子ではなく、見る人、触れる人の心にそっと寄り添う存在。

本日は、少し変わった出自から名作となった一脚をご紹介いたします。

一つの小学校から世界中へ

北欧デザイン界の巨匠、アルネ・ヤコブセンが手がけた「Tチェア」。

1955年、彼の代表作「セブンチェア」と同年に生まれ、モダニズムの風を現代に運びました。

北欧家具の名門フリッツ・ハンセン社とのタッグにより、歴史的な名作として、今でも世界中の人々に愛されています。

元々は、デンマーク・ムンケゴー小学校のためにデザインされたという背景を持つTチェア。

T字型の背もたれは、ランドセルを引っ掛けるという実用性をさりげなく含んでいます。

それでいて、まるで彫刻のように静かに空間を引き締める、美しき機能美。

このチェア最大の特徴は、成型合板による滑らかな一体成型。

1ミリ単位で薄くスライスされた木材を重ね、熱と圧力で生まれるしなやかな曲面は、芸術の域。

無垢材では決して生み出せない、柔和な軽やかさを纏っています。

背もたれはセブンチェアよりもさらに深くカーブし、背骨のラインに優しくフィット。

子供たちの姿勢を自然に正すために、細部まで緻密な設計が施されています。

座る人の身体を、意識せずとも正しい方向へと導く、静かな力強さを感じさせます。

素材には、世界三大銘木のひとつであるチーク材を贅沢に使用。

今回入荷したのは、高さ63.5cmと小ぶりなキッズサイズで、インテリアのアクセントにもぴったりです。

花台やサイドテーブルとしても絵になり、飾るだけで抜群の存在感を放ちます。

1955年からわずか15年ほどしか生産されなかった、Tチェア。

今や現存するものも数少なく、手にすること自体が難しいアイテムです。

ヤコブセンのデザインに共通するのはどの角度でも美しい形と、最小限で最大限の機能を生み出す造り。 

歴史的な名作たる所以が様々な要素から感じられます。 

その名声と人気は誕生から６０年以上の時を経てもいまだ衰えることがありません。