Fritz Hansen
3101 Ant Chair
つい最近見つけたお気に入りの喫茶店は、軽食にサンドイッチしかないような商店街に昔からある普通のお店なのですが、40~50年前から使っているという椅子がとってもかわいくて。
籐張りのカンチレバー。おそらく途中で張り直したのか、背もたれは正面から見るとレザー、シートもレザー。
有名なデザイナーもの?かとも思ったのですが、座高が低くどうも海外製ではなさそう…と気になりすぎてつい店主さんにいろいろ質問してしまいました。
偶然か必然か

インテリア好きの方ならきっと、ショップや飲食店、映画やドラマなど、自宅以外の家具にも興味をもつことがあるはず。
とくに古くからある場所には思いがけない名品が使われていたり、何気ない什器が実は有名デザイナーの手掛けたものだったりして面白いものです。


実際に世界的に有名なプロダクトの中にも多い"どこかのため"に作られたデザイン。この「アリンコチェア | ANT」もまた、Novo Nordisk A/S(ノヴォノルディスク社)という製薬会社の社員食堂のためにデザインされたことで知られています。
でもよくよく調べてみると真相は異なるようで、どうやら結果的にノヴォ社の社員食堂のために作ったことになったというのが正しいようです。


というのも、もともと製品化の採算が合わないという理由で完成したアントチェアの製造を渋っていたFritz Hansen(フリッツハンセン)社にどうにか首を縦に振らせたかったArne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)。
そこにたまたま訪れていたノヴォ社の社長がそのチェアを気に入ったというから、とっさに「これは御社の社員食堂のために作りました」と口走ったそうです。


そんな口から出まかせ(もしかしたら本当かも?)が幸いし、300脚の受注をゲットしたことで本格的な製造へと繋がった同作。絶対に製品化を勝ち取りたいというヤコブセンの熱い想いが伝わってきます。
ちなみにこの時に作られたのは4本脚ではなく3本脚で、氏は亡くなるまで4本脚の製造を許可しなかったのだとか。頑固…いや、完璧主義者とされるだけあって相当に強いこだわりが込められているのでしょう。

イームズの成形合板のような気軽な椅子を作りたい、でも同じものは作りたくはない。そうして生まれた木材を3次元に曲げた世界初の椅子。
試作を重ねる中で強度を維持するためにシェルの左右を削ぎ落していった結果、個性的なくびれをもつ蟻のような形状になったんだそうです。
もはや必然かと思えるほどに、デザインの誕生にも製造の契約にもさまざまな偶然が交錯するアリンコチェア。この椅子は街中で見つけるだけでなく、ぜひ実際に座ってヤコブセンのパッションを感じてみてほしいと思う名プロダクトです。











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