Pierre Jeanneret
kangaroo Chair & smalldesk
ピエール・ジャンヌレ Pierre Jeanneretの遺灰は、インドのチャンディーガルにある、スクナ湖に散骨されたといいます。
それが彼の遺言であり、自分の熱い情熱をかけた街、成長を見守り続けた街へと、遺灰になっても戻りたかったからなのかもしれません。
「ピエール・ジャンヌレ」と「チャンディーガル」。
この2つのキーワードから浮かび上がってくるのが、1947年・イギリス領からインド・パキスタンの独立分離の際に、国境付近に新たな都市を作るために発案された「チャンディーガル都市計画」です。
ジャンヌレの戻る場所。
「チャンディーガル都市計画」成功の代表的な立役者は二人。ひとりはモダニズム建築の巨匠と呼ばれる「ル・コルビュジエ」。もうひとりはコルビュジエの従兄弟にあたる建築家の「ピエール・ジャンヌレ」。
都市の総合デザインを任されたル・コルビュジェ。そしてコルビュジェは最も信頼のおける、従兄弟のピエール・ジャンヌレにチャンディーガルの公共施設で使用する家具のデザインを依頼するのです。
インド・時代背景・政治、そして稀有なデザイナーとが出会ったことで、後に名品と呼ばれることになる、「チャンディーガルの家具」が誕生するのです。
今回入荷したジャンヌレの家具は2つ。両方ともチャンディーガル都市計画の為に製作されたアイテムで、当時に実際に使用されていた希少なビンテージ品です。
ひとつめがこちらのラウンジチェア。
別名「カンガルーチェア」とも呼ばれ、ジャンヌレの代表作とも言えるアイコン的な1脚です。
1955年代にデザインされたカンガルーチェアはチャンディガールにある総合病院のホール用に製作され、個人邸にも納入されていました。
そして特徴的なのは何と言ってもそのフレームラインでしょう。
レッグから背もたれにかけてのZの型をした両サイドフレームはZシェイプと呼ばれ、その特徴的で美しいチーク無垢材のフレームラインが目を惹きます。
その躍動感のある形から「カンガルーチェア」と呼ばれるのが分かるような気がしますね。
背・座のシートにはラタン(籐)を用いており、重厚なチーク無垢材フレームながら、ラタンの涼し気な印象により軽やかさも兼ね備えてたラウンジチェアです。
また、フレームの傾斜が生み出す絶妙な角度により、ゆったりと寛ぐことのできる快適な座り心地を堪能できます。
そして読みかけの本を置いてみる。むむむ、めちゃくちゃ良い! そこにあるだけでも絵になる1脚です!
2台目はスモールデスクのご紹介。
チャンディーガルのパンジャブ大学をはじめとする、様々な教育施設で使われていたとされる学生用のデスクとなります。
同デザインでオフィス用のデスクなども存在しますが、コチラのスモールデスクは幅82cmのコンパクトサイズ感が魅力。
スモールデスクはリプロダクト品も製造されていないと思われ、ビンテージ品でしか入手することは出来ません。
経年と使い込まれることにより風合いを増したチーク無垢材。そしてピエール・ジャンヌレの代名詞とも言えるVレッグとが組み合わさり、何ともいえない愛らしさと温かみの感じられる素材感が堪りませんね。
幕板部分に“G.P.J(H)114”のレターが入っており、当時の雰囲気がそのまま感じられる趣きのある佇まいも良し。
深く色付いたチーク無垢材の粗い木肌や天板の落書きの跡からは、長い年月の歩みと当時の学生たちの日常、その空気が感じられます。
実際にマグやオブジェなどを置いてみるとこんな感じ。雑貨や観葉植物が良く映えます。
椅子を合わせてみても、やっぱり素敵。古くて傷だらけのはずなのに、そのデスクの佇まいは人の心を打つ何かがあります。
2つの希少なジャンヌレの作品。
素朴で力強く、そして洗練されたそのデザインは、家具という枠を超えてプリミディブなアート作品のような魅力を漂わせています。
土地の風土に合わせてインドの手工芸によって製作された、歴史ある希少なオリジナルビンテージ品となります。
本物だけが持つ、特別な空気感を是非ともご堪能くださいませ。