Herman Miller
Nelson Platform Bench
名作と称され今尚多くの人々に愛されるミッドセンチュリー期のプロダクト。
新素材の開発と巨匠たちの遊び心と発想、より良いものを作ろうとする情熱は時代を超えるデザインに形を変えました。
プロダクトが発する強い力。
そしてそれに伴う誕生秘話。
本日ご紹介させて頂くのは明快な形とユニークな背景を持つ名作です。
電撃的なインスピレーション
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今回ご紹介させて頂くのはモダンデザインの象徴とも称される名プロダクト、ネルソンプラットフォームベンチ。
その名の通りアメリカンミッドセンチュリーを代表する名デザイナー、ジョージ・ネルソンがデザインを手掛けたプロダクトです。
発表は1946年。
現在と同様、米ハーマンミラー社が製造を手掛けていました。
70年の時を経ても変わらない新しさと完成度は素晴らしく、今尚様々な空間でその魅力を放ち続けています。
このベンチのオリジナルが作られたのは1945年。
雑誌“フォーチューン”のネルソンオフィスの為にネルソン自身がデザインを手掛けたといわれています。
度々テーブルとして使用されるネルソンベンチ。
自身が使う用途ではなく、元々フォーチューンの雑誌記者用にベンチとしてデザインされたものでした。
手掛けたプロダクトに様々な逸話を残しているネルソン。
このベンチにも彼らしいデザインストーリーが残っています。
客の滞在時間が長くなることを嫌っていた彼は客を早く帰らせる為に工夫した椅子を考案。
そこで完成されたのが椅子としては不自然な座面高とすのこ状の天板のベンチでした。
しかし結果は逆効果だったそう。
むしろ居心地が良いと評価され記者に長居されてしまったというエピソードも残っています。
先述した通り度々テーブルとして使用されているネルソンベンチ。
コーヒーテーブルやセンターテーブルとして使われている姿の方が印象的です。
ベンチと呼ばれていますが、1946年の発表時、実はハーマンミラーもテーブルとして売り出していた様。
1946年の広告には天板にプレートやプランターが置かれている様子のネルソンベンチが描かれています。
“BENCH-TABLE”と言う文字も確認できるので、当初より汎用性の高いアイテムとして売り出していたようです。
デザイン性の高さは勿論、堅実な造りもネルソンベンチの魅力です。
直線的なラインで構成されたすっきりとした造形は「目的を明確に示す外観を作る」というジョージ・ネルソンのデザイン哲学を体現したもの。
リズム良く保たれる座面の隙間は空気を含み、軽やかな雰囲気を感じさせます。
光が通過した際に表れる影も美しく、時間や環境によって変化する陰影も魅力的。
空間や環境に引き立てられる存在感にこそこのベンチの魅力を感じることが出来ます。
印象的な接合部はフィンガージョイントと呼ばれる手法によるもの。
見た目の美しさと強度を実現しており、同時に高い木工技術を感じさせます。
この箇所がシンプル且つ直線的なデザインに木材特有の温度をプラス。
自宅やオフィス、公共施設等、様々な空間に馴染む不思議な柔軟性はこういった箇所が叶えているのかもしれません。
ハーマンミラー社の代表的なプロダクトとしても知られるネルソンベンチ。
このベンチがハーマンミラーのコレクションに加わった最初のネルソン作品でもあります。
一度見たら忘れられないデザインに隠されたまさに誠実なデザイン。
「デザインは社会の変化に対応するもの」と残した通り、電撃的なインスピレーションに込められたデザイン的な形状は今尚、強い魅力を放ちながら空間に馴染ます。