Knoll
Tulip Oval Table
少し前までは夏の草花が色々と視界に入っていたような気がするのに、キンモクセイの香りが魔法を掛けたように急に色彩が寂しくなりました。
秋の花も自分が知らないだけでそこかしこにあるのでしょうが、出不精気味な自分には目にする機会が少ないようです。
何か秋を感じさせてくれる草花があれば是非教えて下さい、お待ちしております。
今回のご紹介はシンプルなデザインながら、それを退屈に感じさせない名作。
宜しければ最後までお付き合いくださいませ。
導き合わせ
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今回はKnoll(ノール、ノル)で製造されているエーロ・サーリネンのオーバルテーブル。
ホワイトラミネート天板のものになります。

ノルはドイツで家具の商いを営んでいた父を持つ、ハンス・G・ノルが1938年にアメリカで起こした会社。
モダンのデザインは人とその活動を繋ぐ機能的なものであるという観点から、「私たちはいつだってモダンである」と伝えるノルのアイテム達。
デザインしたアイテムの売り上げに応じてロイヤリティを支払うという当時として画期的な方法を取る事で、ミース・ファンデル・ローエや、ハリー・ベルトイア、そして今回のエーロ・サーリネンら優れた建築家のデザインした家具を製造する事に成功し、
今ではアメリカに留まらず世界を代表するモダンファニチャーの一つになっています。

「モダン」という概念が重要な立ち位置を占めているノルのアイテム。
それはノルがドイツのバウハウスに大きな影響を受けていたからと言われています。
そういった意味では、今回のエーロ・サーリネンとの名コラボレーションも、運命に導かれたものだったのかもしれません。

エーロ・サーリネンは1910年にフィンランドに生まれ、アメリカで活躍した建築家・デザイナー。
アメリカの美術愛好家ジョージ・ゴフ・ブースがアメリカにおけるバウハウスの役割を担う機関として設立したグランブルック美術アカデミー。
その校舎はエーロの父、建築家エリエル・サーリネンによって設計され、後にエリエルは校長を務めています。
エーロもそこで学び、のちに共同するチャールズ&レイ・イームズと知り合っています。
こうしてみると、親から直接の教えを受け、最高の学校で学び、優れた友人と出会ったというとても恵まれた環境を経ていますね。
(ちなみに母親ロハ・サーリネンも、テキスタイルアーティストです。)

そんなエーロがノルで作品をデザインしたのには、父エリエルが養女として迎え入れた才媛、シュスト・フローレンスが深く関係しています。
グランブルックをはじめコロンビア大学、イリノイ工科大学らで学び、優れたデザイン感とビジネスセンスを持った彼女はハンス・G・ノールと出会い1946年には結婚。
クランブルック時代にもエーロと親交があったシュスト・フローレンスはそうしてノル・フローレンスとなり、彼女の働きかけもあってノルからアイテムを発表する事となったのです。

さてテーブルですが、このシルエットを見て無駄がある、という人はいないと思います。
1本脚のテーブルは、テーブル下のスラム化(足元がごちゃごちゃしている状態の事を指しています)を解決するために研究された唯一無二の形。
自立と安定性を確保するために、脚部本体はアルミダイキャスト(鋳造)。クリームを地面に流し落としたような流線形のフォルムは、1本脚という問題の先の美しさをしっかりと見据えた形。

例えばですが、一般的な4人掛けテーブルの場合、
テーブル(脚1本×4)、椅子4脚(4本×4)、腰掛ける人(2本×4)=合計 28本の細長い脚がテーブル下でスラムっています。
これをこのテーブルと、同時期にデザインされたチューリップチェアに変えると合計が13本と半分以下となるのです。
普段使っているものなので言われないと中々気づきにくい事ですが、テーブルだけでも「ドキッ」とするぐらいに印象は変わります。

様々な形、サイズ展開がありますが今回はその美しさを存分に味わえる幅198×奥行き121センチのオーバルタイプ。
ホワイトラミネートはモダンらしさと、木の温かさとも良く馴染む王道の組み合わせ。
また席についてみて気が付きましたが、円形なので自然と囲む人と視線が向き合います。
はす向かいに座る人でも身体の向きを大きく変えないで済む、というメリットも「モダン」な機能だと思います。

脚が中央にある事で、誰かの足を蹴っ飛ばすなんて事も少なそうなありがたいテーブル(笑)行儀が悪いですが、自宅にあれば素足でそのフォルムを撫でてしまいそうですね。
これが1957年と60年以上前に完成していたという事に驚きます。
MITのチャペル、ジョン・F・ケネディ空港の5番ターミナル、セントルイスのゲートウェイ・アーチなど建築家としての活躍が多いエリエル・サーリネンが、数々のめぐりあわせの結果生み出したテーブル。
いつまでも古びる事のない傑作の一つです。
単純に美しいテーブルとしても、囲む人を繋げる場としても、ミーティングスペースの円卓としても申し分のないテーブル。
お探しの方は、どうぞこの機会にご検討下さいませ。
