KOTOBUKI
side chair
商業主義に偏ったモノや、流行に左右されるモノ。
それらを否定し日本のインダストリアルデザインの確立と発展における最大の功労者となったデザイナー、柳宗理。
作家性を求めない「アノニマスデザイン」を理想とする姿勢を生涯貫き、個性を持ちながらもシンプル、且つどこか匿名性を感じさせるデザインは今日まで様々なプロダクトデザインに影響を与えてきました。
生活に自然と溶け込むデザイン故に、知らずに使っていたという方も少なくありません。
デザイン哲学から姿勢、そして生み出されるデザインその全てが素晴らしく、彼のデザインを超えるプロダクトはこの先生まれないのではないかと思わせる程。
日本が世界に誇る名デザイナーが手掛けた名プロダクトのご紹介です。
全てに宿る「美」
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本日紹介させて頂くのは柳宗理の代表作のひとつとして知られる名プロダクト、コトブキ社のサイドチェアです。
程良いクッション性のシートとFRP素材の自然なしなり。
場所を取らず収納できるスタッキング機能。
そして佇まいの美しさ。
凝縮された隙の無い完璧なデザインこそ柳宗理デザインといえる名作です。

「デザイン」という言葉すら一般に知られておらず、経済成長真っ只中の世の中には安価に作れる質の悪いプロダクトが多く出回っていた戦後の日本。
柳宗理は次のような言葉を遺しています。
「モノがどんどん使い捨てられて、ゴミをつくって行くことが経済の繁栄に繋がるというのは、社会の仕組みとしておかしい。それにデザインという名目でデザイナーが荷担しているということに気付くべきだね。」
モノがあふれ大量生産による大量消費が当たり前となった現代。
空っぽのプロダクトでも大半の人は満たされることを知った社会は使い捨ての傾向を加速させました。
「デザイン」という言葉は本質を大きく損ない、人々は本物を求めなくなったのかもしれません。

「用の美」との言葉があるように、柳宗理デザインの特徴は何といっても圧倒的な使い心地。
これは独自のデザイン法にあります。
紙等で簡単な模型をつくるところから始まり、段々と精度を高め、デザイナー自ら使うことによって使いやすさを確かめたり、かたちのバランスを探る。
現代のデザインで多用されているCADや一般的なスケッチでは使い心地をデザイン出来ません。
デザインの良さを知る場面は、ショールームやお店、SNSなどの画面上ではなく、やはり生活を共にしたときです。
とてつもなく時間のかかる工程を経て生み出されるデザインだからこそ、時代を超えて愛されるプロダクトが生み出すことが出来たのかもしれません。

このサイドチェアもそうして完成されたのでしょう。
FRP素材の自然なしなりと体を包む柔らかい曲線が生む圧倒的な座り心地はまさに柳宗理が大切にしてきた「使い心地のデザイン」を体現した一脚と言えます。
『 美は人々のためにある 』と遺した柳氏は大量消費に伴った大量生産が求められた時代に美しさと使いやすさの両方を目的とした多くの工業デザインを手掛けました。
人々の生活に違和感なく溶け込みながらも叶えたその質の高さと美しさは実際に腰を下ろした時に感じて頂けます。

「後から見たフォルムが綺麗でなければならない」
柳宗理はデザインに関して曖昧な表現を遺していません。
“ こうしたい ” ではなく “ こうでなければならない ” 。
デザインという力強いメッセージは後ろ姿の美しさに宿っています。

モノに溢れる現代。
どの分野のプロダクトでも使い捨てという選択が出来るようになりました。
「いいデザイン = 高価である」が当たり前となり、安価なプロダクトとデザイン性が重要視された高価なプロダクトの差は更に大きく開いたように思います。
いいデザインとは内面から溢れるもの。
生活の中にあってこそ輝くもの。
手軽と手ごろは違うと思うのです。
今一度、再確認したい名作、ジャパニーズミッドセンチュリーを作り上げた歴史的な一脚のご紹介でした。
