GAVINA
Laccio Table
突然ではございますが、
先日のブログでお話しした今秋の展覧会について、東急BUNKAMURAで行われていたイッタラ展に行ってきました。
構成はごくごくシンプルでしたが、イッタラの歴史や立ち位置はもちろんガラスウェアの製造方法の特徴、代表するデザイナーごとの展示など見る側にスッキリと分かりやすくとても楽しむ事が出来るとても良い展示。
展示入口と出口には撮影可能なフォトジェニックアイテムの他、BUNKAMURA 1階の入口にはイッタラ展の関連展示も。
これは全部カステヘルミのキャンドルホルダー。アイテムを知っている身としては思わずニヤリとしてしまう嬉しいインスタレーション。
こういった使い方ができるのも小ぶりで高い品質、スタッキングなど機能まで良く考えられたプロダクトならでは。
もし訪れる機会がありましたら、ご覧頂く事を強くオススメ致します。
今回のご紹介は、人を惹きつける魅力の裏側には歴史があるという事を教えてくれる一品。
宜しければ最後までお付き合い下さい。
1925年から変わらずにいるテーブル
>>この商品の詳細を確認する
今回は様々な人の繋がりが行き交うミッドセンチュリー期においてデザインされたテーブル。
デザインはマルセル・ブロイヤー。一番有名なのはチェスカチェアと呼ばれる椅子でしょうか。
モダンな金属のフレームにラタン編みのシートが付いたミスマッチな加減がとても魅力的なチェスカチェア。
脚部のパイプはよくある4本脚ではなく、カンチレバーと呼ばれる一筆書きのようなフレームになっています。
これによって前後に柔軟にしなる座り心地と空気に座るような緊張感の美しさを兼ね備えた1脚。
これが1928年と100年近く前にデザインされたと聞いたら多くの人はきっと驚く事でしょう。
マルセル・ブロイヤーは1902年ハンガリー生まれの建築家・デザイナー。家具でよく聞く「モダン」という概念の発展に大きく寄与した人物です。
ル・コルビジェらの活躍とともに盛り上がりを見せていたモダニズム。ガラスやコンクリート、そして鋼管と呼ばれるパイプといった科学技術の発展によってもたらされた素材によって開かれた新しい暮らしの形。
憧れを持ったブロイヤーは教育機関バウハウスへと入学し、その実力からユングマイスターとして数年の後には教壇に立つまでの実力を獲得しています。
(※画像のワシリーチェアは販売済です。学芸大学に1脚在庫がございますので気になる方は
そちらをチェック頂けますと幸いです。)
バウハウスで共に教育に携わった仲間の画家、ワシリー・カンディンスキーのためにデザインされた「ワシリーチェア」もブロイヤーによるもの。自転車のハンドルに着想を得て作られた鋼管椅子は組み立てや比較的簡易で、特別な設備も必要としない当時として優れたものでした。
一般に発売される段階になり、製造を手掛けたのはイタリアのガヴィーナ/GAVINA 社。
イタリアモダンライティングのフロス社の設立に携わり、カスティリオーニ兄弟が自身の椅子の製造を託した当時のやり手、ディノ・ガヴィーナがその名を冠した企業です。
経営難から1968年に米大手ノル社に吸収されるまで、アイコニックなワシリーチェア、そして今回のラッチオテーブルは同社の看板商品でありました。
高級な家具といえば貴重な木の無垢材を使用した、重厚なものがまだ主流であった当時。
当然重量もあり、扱うには色々な意味で余裕が必要であった家具。
線が細く強度のあるパイプフレームによって軽く、実用以上に美しく、そして「新しい」家具が衝撃を与えたのは必然だったのかもしれません。
ウォルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエらバウハウス校長を歴任した実力者たちが後にパイプフレームの作品を作ったこともそれを裏付けています。
1925年デザインと発表から時は経てどももちろん機能的な2台のテーブル、組み合わせ次第で様々な使い方が可能です。
センターテーブルをソファ前に、サイドテーブルをソファ横に置くオーソドックスな使い方。
スタッキングする事でディスプレイテーブルとして、L字に並べる事でコーナーテーブル的な使い方も。
そして高さが異なるテーブルを交差させる事で絶妙なモダンシルエットでお楽しみ頂けます。
ここ数年の間で日本のアイテム含め人気が再燃しているモダンなデザイナーズプロダクト。
今回のようにシールが現存している良好なコンディションのものは少なく、今後ますます入手が難しくなると思われます。
今回は1960年代の物と思われるテーブル。50年を超え、後世に残してゆく価値を認められたテーブルたちです。
その価値を受け継いで頂ける方にこそお勧めな逸品。
どうぞこの機会をお見逃しなく。