Kartell
Wall Mirror Model 4727
数いる有名デザイナーの中でも夫婦で活躍する(した)人というのは、比較的少ないのではないでしょうか。真っ先に思い浮かぶのはイームズやアアルト夫妻くらいです。
でも両方がデザイナーであるという条件を除いたら、この2人もまたその仲間に含まれるのかもしれません。
カステッリ・フェリエーリ夫妻。夫が化学者、妻がデザイナーという異業種同士のご夫婦です。
片鱗であり功績であり証である
実はインテリアにとてもなじみの深いこの2人。名前だけではピンとこずとも、Kartell(カルテル)の創業者というとさすがに有名人だと納得いただけるかと思います。
プラスチックの特性について研究していたGiulio Castelli Ferrieri(ジュリオ・カステッリ・フェリエーリ)は、1949年にアンナとともに同社を設立。バケツやちりとりなどの日用品の開発で培ったプラスチックの成型技術をもとに60年代頃から家具の製作をスタートさせます。
といっても設立当時はまだ夫婦ではなかったようで、2人が結ばれたのは1960年のこと。デザイン誌の編集に携わっていたというAnna Castelli Ferrieri(アンナ・カステッリ・フェリエーリ)がデザイン活動を始めた翌年でした。
技術者とデザイナーという新しい関係のもとアンナは次々と作品を発表し、中でもコンポニビリは不動の人気作として現在もなお世界中で愛され続ける彼女の代表作です。
と前置きがとても長くなりましたが、独自の専門分野をもつ2人がタッグを組んだことで生み出されたデザインは数知れず。このウォールミラー「Model 4727」もまたそのひとつです。
デザインされたのは1980年代。現行での販売はされておらず、実はビンテージ品としてもほとんど出回っていない知る人ぞ知る的なプロダクトだったりします。
ブラックのフレームはもちろんプラスチック製。ミニマルなストレートラインが都会的な印象を与えつつ、素材によるカジュアル感が程よいモダンさを醸し出しています。
白い壁に輪郭が際立つ50cm角のスクエア型はアートフレームのような感覚で取り入れられるうえ、合わせるインテリアスタイルを選ばないシンプルさが何よりの魅力といえるでしょう。
かつてはあまり評価されていなかったプラスチック素材に魅了され、ベストセラーとなる製品を次々に世に送り出してきたカステッリ・フェリエーリ夫妻。
素材とデザインという異なるアプローチでそれぞれが本領を発揮することで、新時代を築き上げてきました。
この「Model 4727」はどちらかといえばマイナーなアイテムに分類されるかもしれません。でもカルテルと2人が歩んだ歴史の片鱗であり功績であり証でもある、なんて思うとより魅力的に思えてくるのです。