Cassina ixc
LC1 Sling Chair
温かいお茶やコーヒーを飲むのが嬉しい季節になってきました。
流し込んだ時に、胃からじんわりと身体全体に温度が伝わると、どこかほっとする気分になりますね。
今回のご紹介は名作中の名作。
いつも一生懸命に頑張っている方に、自分の時間を大切にする時に座って頂きたい1脚です。
宜しければ最後までお付き合いくださいませ。
モダニストがカッシーナに託した己の願い
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今回はイタリアにあるモダンファニチャーを代表するメーカー、カッシーナによるチェアです。
優れた手工業と、高品質な機器による最先端の製造技術を保持するカッシーナ。1927年の設立という事もあり、数多くの名作を製造しています。
現在カッシーナは巨匠と呼ばれるデザイナー達による「イ マエストリ」と、今を活躍するデザイナー達による「コンテンポラリー」2つのコレクションを展開しています。
今回のチェアはもちろん前者。歴史を作り上げた巨匠の代表作と言って過言ではありません。
ル コルビジェ。近代建築において大きな役割を担った建築家。1887年にスイスに生まれ後にフランス国籍を取得しています。良く呼ばれるコルビジェという名前はペンネームで本名はシャルル=エデュアール・ジャンヌレと言うそうですね。
スイスの特産である時計の技師を目指したコルビジェは、職業の上ではハンデであった弱視という事もあり画業へと進みます。そして1907年、当時の美術学校校長の勧めによって邸宅の設計をしたのを皮切りに数々の公共建築から都市計画まで、多くの作品を手掛けました。日本では上野にある国立西洋美術館が有名ですね。ユニテ・ダビタシオンや昨今のムーブメントであるチャンディーガルの都市計画もチェックして頂きたいポイントです。
それまでは建築物を「壁」で支える必要があると多くの建築家が考えていた中、鉄筋コンクリートと適切な柱の配置等によって担保された強度によって自由な壁面やファサードを作り出したコルビジェ。
当時は批判もされたようですが、氏の考えは近代建築の5原則として現在の私たちの暮らしに大きく関わっています。
モダン。発表された1928年当時、流行していたアールデコのような装飾のための装飾ではない、機能のための形。
コルビジェのデザインには、その形でないと適わない必要性というものを大切にしていたと感じられます。
例えば、パイプによるフレームは基本潔い直線ですが、座面から後ろ脚につながる部分にはカーブがあります。
座面に傾斜をつけて、座る人の荷重を後ろ側に寄せる事で深いくつろぎに。背もたれは回転する事で座る人に応じて最も適切な角度に倒れてくれます。
前脚と後脚は直線でつながっていません。これによってサイドはとてもスッキリとした佇まいになっています。後ろ脚側に隙間がある事で、重力に逆らうような緊張感のある軽やかさを、見る人に感じさせてくれるのですね。
また座る時、分割された荷重はこのカーブを介して座面側と背もたれ側で打ち消し合うようになっています。
パッと見では漠然としか気づけない美しさには、構造的に優れたデザインと、それを可能にするトップメーカーの技術が潜んでいる事を伝えてくれます。
他にも、フレームへ均等に荷重を伝えるシートは肉厚のレザー。座面は約4ミリ、背もたれやアーム部には約5ミリ厚と強いテンションにも負けない上質な物が使われています。
アームはレザーである事で、掴む時にはその人の手の大きさに応じてたわみます。鉄や木製であればこのようにアームの形は変わりません。人によっては起こりうる掴みにくいという問題は解決するユニークなアイデアです。
アームの両端には幅広につかめる突起がありますので、立ち上がる時でも困らないようになっているのは流石と思わずにはいられません。
よく取り上げられるコルビジェの言葉、「住宅は住むための機械である」。これは意味のない装飾は人のためにならないと強く望んだ気持ちから出た言葉なのかもしれません。
使う人のためになる機能。これを突き詰めた結果が、世界が認める名品として今も残っています。
コルビジェのデザインを叶えるために使われたパイプのフレームはモダンデザインの象徴になっています。リプロダクト品も多く存在しますが、正規品にはデザイナーの誠実な思いを伝えるよう熱量が掛けられていることが強く感じられます。
今回はコンディションも良好な1脚。
通常はクロームメッキのフレームですが、今回は入荷頻度の少ない、光を吸い込むようなマットブラック。
深く、美しく、くつろぎをもたらすチェアをお探しの方はまたとないチャンスとなります。
どうかお見逃しのないようにお願い申し上げます。