Artifort
Ribbon Chair
大阪万博もせまるところあと1年。無事に開催されるのか、一人ドキドキしています。
大阪万博といえば1970年にも開催されましたが、その際フランスパビリオンにとんでもないソファが展示され当時の人々を驚かせたそうな。
新たな発想で作られた蛇のようにうねる巨大なソファ"Amphis(アンフィス)"は、本日ご紹介するリボンチェアのデザインを手掛けたPierre Paulin (ピエール・ポラン/1927-2009)によるものでした。
本日ご紹介するのは、後に国際インダストリアルデザイン賞の受賞やフランスの大統領府であるエリゼ宮アパートメントの内装を手掛けるなど大きな功績を残し、名実ともにデザイン界の巨匠の一人として数えられるようになったポランの代表作でもある「リボンチェア」。希少なビンテージの1脚です。
希少な『赤いリボン』
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彫刻家だった大叔父の影響を受け、芸術の道を歩まんとしていたポランですが、事故による怪我でその道を諦め家具デザインの世界へと転向。
1950年代にはTHONET(トーネット)で、いくつかの家具デザインを手掛けました。
その後の1958年にはオランダのArtifort社と関係も始まり、"ピエール・ポランらしい"近未来的なデザインの数々が生まれる事に。

(トーネットでデザインを手掛けたプチデスク メトロクスによる復刻品)
"Artifort (アーティフォート)"は1890年にオランダで室内装飾を手掛ける会社としてスタートした老舗家具ブランド。
その名は芸術性を意味する"art"と快適性を意味する"comfort"を組み合わせた造語から成っています。
1930年代の不況に立ち向かうべく、このキャッチ―なブランド名とロゴを生み、本格的に家具作りに取り掛かったアーティフォートは、ピエールポランをはじめとする優秀なデザイナーの起用によりさらにその勢いを伸ばします。

さて、このリボンチェアが生まれたのは1965年のこと。
65年といえば宇宙開発が本格化したスペースエイジデザイン全盛期。これまでの家具デザインの常識を覆す新たな発想、新たな素材を用いた近未来デザインのアイテムが流行の波に乗り生まれました。
60~70年代はとにかく斬新で大胆なデザインが多くあり、アーティフォートから発表されたものだけでもタンチェア、オレンジスライスチェア、マッシュルームチェア等、優美な曲線を持つアイテムが多くありますが、その中でも一際存在感を放つのがこちらのリボンチェアではないでしょうか。

(Tongue Chair ※SOLD)

(Orange Slice Chair ※SOLD)

世界中のファンを魅了するこの独創的なデザインは、折りたたまれたレストランのナプキンの如く、ジェスチャーひとつで絶対的にシンプルなモノを作りたいという想いから生まれたそうです。
結果として辿り着いたのが、このループしているかのような背座とアームの形状。
本体はホワイトの塗装が施された木製のベースに乗せられており、まるで地面から生えているかのような有機的なデザインとして完成しています。
この美しさは、彫刻家を目指していたポランの美術に対する造詣の深さあってのものでしょう。

大胆なデザインで世界中のファンから評価される一方、ポラン自身は自ら生み出したにもかかわらず突拍子も無いデザインだと思っていたらしく、常に改良の余地があると考えていたそうです。
名声に奢らずより良いものにしたいと考える真摯なモノづくりへの向き合い方、その人間性が結果としてデザインにも表れ、高い評価へと繋がっているのだと思います。

デザインも然ることながら、座り心地も極上。
絶妙な"しなり"と身体を守るように包み込むアームが齎す安心感。やや広めの座面はあぐらをかける程度のスペースが確保されており、ある程度自由な姿勢でお座り頂けます。
寛ぎのひと時をより豊かなものにしてくれることでしょう。

ラウンジチェアとしてはやや大きめございますが、背が抜けた浮遊感のあるデザインは圧迫感を抑え軽快な印象に。
どの方向からみても違った美しさ見せる立体的なデザインは陰影を生み、まるでオブジェのような存在感を放ちます。

国内では滅多に見掛ける事の無い、当時のオリジナルビンテージ。
カラーも『リボン』の名に相応しいレッド。コレクションに加えるにはもってこいのピエール・ポランの希少な名作です。
