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Windsor Dining Chair
インプションで目にするアーコールの家具はほとんどがビンテージですが、一部のデザインのみ今もなお現行で製造されています。
代名詞として愛され続けるこのフープバックのウィンザーチェアもまた新品ピカピカを迎えることができるデザインのひとつです。
でも今回はビンテージと現行のちょうど間くらいに作られた1脚。新しいと古いのいいとこどりができちゃいます。
チョコ色 makes it come true
デザイン自体に大きな差異はないけれど、アーコールの家具には実は今と昔で少しだけ違いがあります。
例えば材質。当初からずっと用いられてきたイングリッシュエルム材が木の病気により壊滅し入手が困難に。現行では基本的にアッシュ材が使われています。
そして、色。ナチュラルやダークブラウンをはじめ、モノトーン色などお好みの木色を選べるようになった現在のアーコール。
対してビンテージでは主にブラウン色のみが製造されていましたが、その絶妙な濃淡やトーン、明るさの違いにひと言で茶色と表現できない奥深さを感じられます。
そんな今昔の特徴を踏まえたうえで今回のアーコールチェアを見てみると、座面にはエルム材、色味は薄っすらと木肌が見えるくらいの艶のあるチョコレート色の塗装。
一見単色のようですが、座面の後ろや脚底にかけて微妙にグラデーションがかっていて、職人さん泣かせの(つまりは色の再現が難しい)ディープな色合いに仕上げられています。
ゴールドのメダリオンが座面裏に埋め込まれた、ちょうど現行に切り替わる前の1990-2000年代に製造されたこちらのモデル。
現行では味わうことのできない素材感と個性的な色味をまといつつ、ビンテージ品に比べるとヤレ感の少ないコンディションで、両方のメリットを兼ね備えているといっても過言ではないでしょう。
ちょっと下世話な話ですが、1脚10万を超える新品のアーコールチェア。食卓に揃えるとなると…けっこうな高級家具です。
それでも現行には「育てる」という楽しみがあり、対してビンテージには「経年」という付加価値がつきます。優劣はつけられないというのが本音です。
どちらにせよ、修復を重ねることで長く日常を共にできるアーコールの椅子。
飾らないデザインに少しだけクラシカルな要素をプラスするチョコ色の1脚なら、どちらの欲求も同時に叶えてくれそうです。