artek
Chair 69
1935年、フィンランドの首都ヘルシンキに設立したファニチャーブランド「アルテック Artek」。
社名の由来は1920年代に沸き起こったモダニズム運動のキーワードともいえる「Art」と「Technology」の2つを掛け合わせた造語で、建築家・デザイナーのアルヴァ・アアルト、アイノ・アアルトなど4人の若者によって「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的に設立されました。
本日はそんなアルテックが設立当初から販売する、永年のロングセラーが入荷いたしましたのでご紹介します。
共に暮らすかたち
創設者の1人であり、20世紀を代表する建築家であるアルヴァ・アアルトが手掛けた「チェア69 Chair69」。
同時期に開発されたスツール60やチェア66と比べて幅の広い台形の座面と背中にフィットするように深くカーブした背もたれによって、ゆったりとした姿勢で座ることができる点が特徴のチェアとなっています。
細身のフレームと背もたれはすっきりとした印象で、誕生から90年近い年月が経っていることを感じさせない不朽の一脚です。
「Less is more=少ないほど豊か」とはモダニズムのパイオニア、ミース・ファン・デル・ローエが提言した有名なスローガンですが、アルテックの諸作品もまた、モダニズムを体現するかのようにシンプルなデザイン。
スツール60のフレームに背もたれを追加したような構造は、モダニズムに強く影響を受けて生まれたアルテックらしく、それでいて素朴な造形です。
脚部にはアルテックの代表作ともいえるスツールと同様に、独自の曲木技法「Lレッグ」を採用。
バーチ無垢材のフレームに切れ込みを入れ、そこに薄いベニヤを差し込むことにより部分的にプライウッド(積層合板)にして曲げ加工が施されています。
この技術はアアルトがアルテックを設立するにあたり、工業化の波が押し寄せるフィンランドで多くの国民にプロダクトを届けるための大量生産技術と、そのための家具の部品の統一化を模索する中で編み出された技術であり、同時にアルテックの家具デザインの礎ともなりました。
様々なカラーバリエーションを持ち、パイミオ・サナトリウムの内装デザインを再現したものなどその種類は実に多彩ですが、今回入荷したのはクリアラッカーを塗布した最もシンプルなナチュラルカラー。
背もたれから座面、脚に至るまでバーチ材の風合いがたっぷりと表れ、繊細できめ細やかな木肌がお楽しみいただけます。
モダニズムが掲げた芸術と技術の融合を実践し、後の家具作りに多大な影響を与えたアルテックとアルヴァ・アアルト。
洗練されたデザインと独自の技術によって生み出された有機的なフォルムは、木材本来の温かみを感じられる一脚です。
バーチ材の風合いを活かしたデザインでこれからの経年変化も楽しみなチェア69、ぜひこの機会にお求めください。