Wall-All Ⅲ
ものは隠して収納する。
そんな当たり前を壊し見せる収納を提案することで収納の名作となったウーテンシロ。
ミッドセンチュリー期の名作を語る上で欠かせない存在となっている壁掛けラックには次作がありました。
本日ご紹介させて頂くのは、名作ウーテンシロのその次の収納。
ウォールオールⅢのご紹介です。
生活を飾る
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1969年、衝撃的なデビューを果たした名作ウーテンシロ。
語学学校出身のドイツ人、ドロシー・ベッカーがこの衝撃的なデザインを手掛けています。
なんと彼女はデザイン未経験者。
元々は子供に形を教えるための知育玩具としてデザインしたのがウーテンシロのベースでした。
さまざまな形のポケットで構成された収納は遊び心くすぐり、使うものを楽しませます。

そんなドロシー・ベッカーの婚約者は「光の詩人」「光の魔術師」と呼ばれる照明界の巨匠インゴ・マウラー。
身近に天才デザイナーがいることは刺激の多い毎日だったのかもしれません。
インゴ・マウラーがウーテンシロを生産する際の25万マルク(当時約1800万円)という多額の資金を出資したという逸話も残っています。
この環境がユニークな発想を形に変えました。
発表後ウーテンシロの収納力と見た目のユニークさは認知され、ヨーロッパとアメリカを中心に圧倒的な成功を収めています。

ウォールオールⅢはその後の70年代初頭に発表されました。
家庭での使用を意識したコンパクトなサイズ感とウーテンシロに共通する収納力とキャッチーなルックス。
こちらもウーテンシロ同様成功を収める名作となるかと思いきやそうではありませんでした。
石油危機に直面しプラスチック素材を用いた家具の製造が難しくなったのです。
デザインに興味を持つ消費者は木材等の自然素材に注目することになります。
新素材として登場したプラスチックは過去の素材となってしまいました。

70年代中盤には廃番になったウーテンシロとウォールオールⅢ。
一時この名作は忘れ去られていました。
しかし良いデザインというのは繰り返し、愛され続けるもの。
ミッドセンチュリーモダンファニチャーの魅力の再認識はプラスチック家具に再び命を与えました。
ウーテンシロのデザイン性の高さは再び注目され再生産されることとなります。
しかしこのウォールオールⅢだけが復刻されませんでした。

幅広いカラーで展開されていたウォールオールⅢ。
ウーテンシロ程場所を取らないサイズ感故にどんなカラーでもディスプレイしやすかったのだと思います。
情報を集める最中、当時のパッケージを発見したのですが赤、黄、茶色、白、青、ビスケットカラーのバリエーションがあったとの記載が見られました。
発色の良いグリーン(パッケージに記載されていなかったので詳細は不明です)もあったそう。
もう手に入らないビンテージアイテムですが、このラインナップには心が躍ります。

壁上のアートと称されたウーテンシロ。
ウォールオールⅢはそれとは異なる魅力を持ちます。
アートと言う程背伸びをせずに、暮らしを少し良く見せてくれる。
何時も持ち運ぶ鍵や財布類を雑多に置いてみましたがこれだけで絵になります。
残念ながら現存するビンテージは少なく、再販を祈るばかりですが見込みはなさそうです。
生活を楽しく、より良くしてくれる。
これこそプロダクトデザイン。
忘れられた名作のご紹介でした。
