UK Vintage
Club Chair
深い赤のレザーに、艶のあるオーク材。
そこへずらっと並んだ鋲が加わって、かなり重厚感のある佇まいなこのチェア。
でもよく見ると全体には丸みがあって、どこか可愛らしい。
カッコいいのにちょっと親しみやすい、この絶妙なバランスに惹かれます。
英国クラシカルな雰囲気をしっかりと持ちながら、アールデコらしい端正さも感じられる、存在感のある一脚です。
英国の風格と、長い時間を刻んだ革。過去とこれからをつなぐ一脚。

クラブチェアとは、上流階級の紳士の社交場であるジェントルマンズ・クラブで愛用されたことからその名が付けられたフランス発祥の1人掛けソファ。
ジェントルマンズ・クラブは、17世紀後半からロンドンに広がったコーヒーハウス文化などを背景に発展した会員制の社交場で、貴族や上流階級の男性たちが集まり、食事をしたり新聞を読んだり、政治や経済について語り合ったりしながら、人と人との交流や情報交換を行っていました。
厳格なマナーやドレスコードもあり、誰もが気軽に入れる場所ではなかったそうです。
外の喧騒から少し離れた、限られた人たちのための静かな空間。
そんな場所に、この様な革張りの椅子が並んでいた光景を想像すると、なんだか映画のワンシーンのようでワクワクします。

このチェアの主役といえば、やっぱりこの赤い本革。
経年によって色に濃淡が生まれ、ところどころに傷や擦れも見られます。
新品のように均一ではなく、少しくたっとした革の表情がとてもいい。
深い赤の色合いには高級感がありながら、革そのもののワイルドさもしっかり残っています。
作られた当時はきっとハリのある整った印象のソファだったはず。
年月を重ねたことで、今このソファを目の前にしたときにしか感じられないロマンや、沢山の人と長い時間を過ごしたことで生まれる味わいや深みがにじみ出ています。
このチェアが今までどんな場所を巡ってきたのか。
どんな人がどんな気持ちで座っていたのか。
たくさん想像してしまいます。

そんな赤い革を引き立てているのが、アームやベースに使われたオーク材と、丁寧に並べられた鋲です。
アームの木部には縦方向の彫が施されていて、派手過ぎないのに目を惹く存在感があります。
このようなきちんと整えられた木のディテールを見ると、英国家具らしい真面目さというか、端正な雰囲気を感じます。
それに対して、赤い革には少し自由な表情がある。
この組み合わせがとても格好いい。
そして鋲。
これがまた木部と近いブロンドのような色合いで、素材感のある木と革の間にすっと馴染んでいます。
光が当たると一粒ずつきらっと反射して、重厚なチェアの中に華やかさをひとさじ加えてくれる。
名脇役たちが素晴らしい仕事をしていますね。

そして個人的に見つけて「あっ!」ちょっと嬉しい気持ちになったのが、背もたれに残された“∞マーク”のような形をした傷。
どのような経緯でこんな形の傷が付いたのか全く分かりません。
でもそんなところが面白い。
このチェアがこれまで過ごしてきた時間を全て知ることはできないけれど、こうした小さな跡が、ほんの少しだけ過去を想像させてくれる。
そしてこれからまた誰かのもとへ旅に出て、新しい傷や艶を重ねていくのだと思うと、この“∞マーク”のような傷が「これからも続いていく時間」のように思えてきます。

さて、このチェアを今の暮らしに迎えるならどんなふうに使いますか?
たとえば夜、部屋の照明を少し落として、サイドテーブルにはロックのウイスキー。
分厚い本を一冊持ってきて、深く腰掛ける。
外の音も気にせずページをめくりながら静かな時間を過ごす。
そんな、大人な時間がとても似合いそうです。
でも、もう少し気楽に楽しむのもありだと思います。
奥行きのある座面だから、身体を小さく丸めて体育座りをするように座って、お気に入りの毛布にくるまる。
片手にはポップコーンを持って、部屋を暗くして大好きな映画を流す。
あっという間にちょっと贅沢な「おひとり様映画館」の完成です。

たくさんの人が使い繋いできたこのチェアを、つぎはあなたが“あなたなりのかたち”で使う。
そんなふうに、古い家具が持つ風格を楽しみながら、そこに自分の時間を重ねていけるのもビンテージ家具の面白さなのかもしれません。
長い年月を経て、またつぎの誰かの物語の続きを待っている。
そんな、味わい深いクラブチェアです。































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