UK Vintage Windsor Rocking Chair

今日は穏やかな日和です。風は控えめで、顔に吹き付ける空気もぬるい。 寒い冬の日々の中に生まれた、まるで隠れ家のようなひっそりとした1日ですが、明日は関東にもしっかりと雪が降るという予報。 この湿気に寒さが加わると、ボタン雪のような重い雪が降るかもしれません。 冬らしい景色ではありますが、足元や交通機関にも影響が出るかもしれません。皆様もどうぞお気を付けてお過ごしください。 今回はそんな冬本番、温かくして過ごすお部屋にピッタリの1脚。 最後までお付き合い頂けますと幸いです。

ただ静かに

>>この商品の詳細を確認する ウィンザーチェア。家具をご存知の方であれば耳にすることが多いであろうワード。 イギリスの家具はいわゆる「洋家具」というカテゴリーの中で中心を占めるアイテムです。 イギリスには家具に使うための強度に優れた木材が多く自生していた事、移り変わる王朝に応じて幾つものデザイン様式が生まれ、それを実現する高い木工技術がはぐくまれた事。 そして、それと並行するように実用的な椅子が庶民の中で作られ洗練されていったというポイントが重なり、その結晶であるウィンザーチェアは数多くの椅子の原点となっています。 その特徴はなにより心地良く、丈夫である事。 農民たちが自分たちで使うために作った椅子から評判を呼び、地域産業として根付いていったイギリスのウィンザーチェア作り。 自分たちが心地よく使えるための工夫が細かく積み上げられている事で、日本の「用の美」にも通じる洗練された美しさが宿っています。 誰か特定のためにあつらえた一品ものでは無いのに、置いた場所に品のある雰囲気をもたらしてくれる。 それが今なおアンティーク・ビンテージとして愛されるウィンザーチェアの魅力の一つです。 座面をつくるボトマー、棒材を挽いてパーツを作るボッジャー、木を蒸して曲げ加工を行うベンダー、そして椅子の形に組み上げるフレーマーなど、専門の職人による分業で出来上がるウィンザーチェア。 座面には杢目の表情が良いエルム（ニレ）材、明るい木肌が上品なユー（イチイ）材、固くも粘りがあるため曲木や棒材として最適なトネリコ（アッシュ）やビーチ（ブナ）材と用途にふさわしい材が使われているのも特徴の一つです。 今回は座面がエルム材、その他はオークもしくはアッシュと思われる材が使用されています。 はっきりとした木目をよりお部屋に馴染ませる上質なダークブラウン。仄かな光沢感のある塗装は日差しや灯りをつややかに照り返し、木材の保護という実用面の他に陰影をより印象的に感じさせてくれます。 幅は53.5センチ、スポークの内側でも約41センチとゆとりのあるシート。座繰り（ざぐり）という凹凸が付けられた座面は座った時の収まりが良く、「身体にフィットする」というメリットを身を持って実感させてくれます。 背もたれはダブルボウバックと呼ばれるタイプ、曲げ木の技術が伝わって可能になったデザインです。弓を引き絞った形に似ている事からボウ（Bow、弓）バックと呼ばれ、初期のウィンザーチェアよりも格段に堅牢性が増して人気となりました。 背もたれの外枠、そしてアームをぐるりと覆うボウが二つあるので「ダブルボウ」という名称で呼ばれています。 そしてなにより見逃せないのが、ロッキング仕様である事。 揺らす、揺れるという意味を表すロック（Rock）。音楽のロックと語源が一緒というのが興味深いところです。 座りっぱなしだとしんどくなる太ももの裏側。前後に揺れる事によって重心がずれるので圧迫感は減り、長時間の使用でも疲れにくいようになっています。 勢いよく行き過ぎないためかロッカーと呼ばれるソリ状の脚部には奥に柔らかな角度が付けられており、それもまたアナログな良さを感じさせます。 ラグ等の上では感じられない程の僅かな違いですが、日々使うための工夫が凝らされているのはやはり嬉しいもの。 肩甲骨まで支える背もたれ、フィットする座面、まるで椅子があやしてくれているかのようなロッキング。 ストーブやヒーターのそばで羽織りものやクッションと一緒に腰かければ、誰もがうらやむような寛ぎのワンショットが出来上がります。 ダブルボウに加えてアームを支えるサポート、脚部の貫と手間のかかる曲木がふんだんに使われて、背もたれのスティックはボウの上下で形も異なります。 悪目立ちをせず、ただ静かに、使う人のために手間暇と年月で磨き上げられた結晶の美しさ。 誰もが「大切にしたい」と思ったからこそ今に残ったビンテージプロダクトです。 毎日の暮らしを一生懸命頑張っているあなたに。慈しみたい誰かのために。 一日一日が大切だと気が付いた、価値を知る方に是非お迎え頂きたい。そんな素敵な1脚です。