PP mobler
PP586 Fruit Bowl
生涯で500脚以上ものチェアをデザインしたことで知られている椅子の巨匠、ハンス・J・ウェグナー。
チャイニーズチェアやザ・チェア、Yチェアなどなど家具好きならば目にしたことのある名作チェアばかり並びますが、実はウェグナーはデイベッドやキャビネット、テーブルなどのデザインも手掛けており、そのどれもが生活を支える裏方として機能しながらも息を呑むような美しさを携えています。
本日ご紹介するのは、同氏のデザインの中でも一風変わったアイテム。しかし確かにウェグナーの美学を感じる一台です。是非お付き合い下さいませ!
風変わり、でもパーフェクト
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「フルーツボウル Fruit Bowl」が発表されたのは1956年の国際家具見本市であるミラノ・サローネでのこと。"ヨハネスハンセン Johannes Hansen"社が製造し、当時わずか10数台が販売されました。
その後35年の時を経て、デンマークの家具工房である"PPモブラー PP mobler"が1991年よりフルーツボウルの製造を引き継ぎ、当時とは違うアッシュ材とマホガニー材のみを使用し復刻生産。
そして2006年にフルーツボウル誕生50周年を祝し、発売当時と同じくチーク無垢材のフルーツボウルが50台のみ限定生産されました。
今回入荷したのは、ボウル裏のプレートに2/50のシリアルナンバーが入ったPPモブラー製のお品物。お目にかかるのも稀な大変貴重な1台です。
構造は至ってシンプル。円形に3本脚の付いたフレームに正円の大きなボウルをぽこっと乗せるスタイルです。
フルーツボウルは、ウェグナーがろくろ技術を用いてデザインした唯一の作品。チェアデザインの背もたれやアームに当たる部分が無いため、よりストイックなアウトラインを堪能できます。
すらりとしたフォルムが空間を瑞々しく演出してくれるウェグナーのデザインですが、こちらのフルーツボウルはそういった印象に加えてより親しみを覚えるのは、どことなく菓子盆っぽさがあるからでしょうか。
この美しい縁部分をご覧ください。分厚い木材を丁寧にくり抜かれ出来た窪みはただ鋭利なだけでなく、チーク無垢材の泰然として構える杢目と呼応するように柔らかくも芯の強いカーブを描いています。
人間社会が環境に与える影響を意識しながら一生使える家具を作る、という理念を親子3代に渡って守り続けるPPモブラーらしい厳格なまでの木材への敬意を感じますね。
ボウルの直径は約65cm。季節の果物や草花を惹きたてる陰影を演出し、絵画のように仕上げてくれるため、ボウルを取り外してダイニングテーブル上やサイドボードに飾り付けるのもおすすめです。
しかしフレームの美しさも忘れてはいけません。ウェグナーの作品には珍しいステンレススチール製ですが、そこには確かに同氏らしいデザインが随所に散りばめられています。
少し角度の付いた3本脚の先端には丸みが持たせられ、太さはあくまで華奢に抑えることで硬質な素材ながらも柔和さと潔さを併せ持つ唯一無二の雰囲気に。
チェリー材やオーク材で再生産もされていますが、キリっと印象を引き締めるスチールレッグに合うのはやはり圧倒的な濃密さを持つチーク材だと思います。
ウェグナーの緻密なデザインにPPモブラーの技術力、そして何よりも50周年限定生産品である希少なチーク材製と全ての要素がパーフェクトなPP586フルーツボウルのご紹介でした。
果物や雑誌、お気に入りのオブジェなどを置く台として、はたまたPP586自体を彫刻作品として贅沢にレイアウトしても、空間の印象をガラリと変えてくれる力を持った1台です。
ウェグナー作品の1つとしても珍しく貴重なフルーツボウル、是非コレクションの1つとしていかがでしょうか。