PP Mobler

PP51/3 V-Chair

本日は、背もたれのV字に自然と目が行く個性豊かな三本脚椅子" PPモブラー / PP Mobler "『 PP51/3 Vチェア V-Chair 』のご紹介♪

色と形の美しい計算式

日照時間が短く屋内で暮らす時間の長いデンマークの生活。様々な気持ちを明るくさせてくれる色鮮やかな食器や、ゆらゆら揺れるモビール等の室内装飾、ルイスポールセン社の幻想的な光のデザイン等、お部屋を美しく演出してくれる数多くの北欧デザインが誕生しました。

" PPモブラー / PP Mobler "は、家具職人であったアイナ・ペダーセン、ラース・ペダーセン兄弟によって、北欧デンマーク・コペンハーゲン北部の町に小さな家具工房として1953年に創業。社名は兄弟二人の頭文字「P」が由来となっています。1970年代からは、他の工房が持つ多くのウェグナーデザインの製造権を継承。「熟練の名工集団」と呼ばれ母国は勿論、世界からの高い評価を受けています。

デザインを手掛けたのは、Yチェアでもお馴染み北欧デンマークの鬼才ハンス・J・ウェグナー。生涯で500点以上もの膨大な数の椅子を誕生させ、その殆どが名作と呼ばれています。13歳の頃より家具職人として修業を始め、その4年後には指物師マイスターの資格を取得。木に触れ、素材の特性を知りながら培った家具製造の経験が、同氏のデザインの基礎となっています。

背もたれはどことなくYチェア（1949年）のよう。そして座面はハートチェア（1952年）と同様の造りで、それぞれの良い所を組み合わせて作ったかのような三角構図が際立つ個性的なデザインです。

確かにYチェアの背板はYの形をしていて、こちらはVの形をしている。見たままの名称はとても分かりやすく、仮に500脚のウェグナーの椅子が並んでいても、そのヒントから探し出す事が出来そうです。

シンプルな造形が特徴の北欧デザインですが、名づけも同様にとてもシンプルで直球。意外とそうした事も人を惹きつける魅力のひとつかもしれません。

座面の形状にあわせて、脚部は日本では珍しい三本脚。石を敷きつめた土間が多かったデンマークの民家で重宝されていたというその国ならではの理由も。またアルネ・ヤコブセンの名作「アントチェア」の三本脚が座った人の足とあわせて5本で安定するみたいな話がある様に、意外にも高い安定感があるのも特徴です。

ちなみにウェグナーが手掛けた最初の三本脚チェアは「ハートチェア」。Vチェアがデザインされたのは1988年なので、少し時間は空いてますが、三角脚にハマったんでしょうか？1992年までの短い期間のみ製造されていた為、そんな想像力も色々掻き立てるコレクタブルな逸品といえますね。

人の注意を引き付ける三角形の視覚効果と、空間の印象を和らげる曲線効果。そのハイブリッド的な要素で大胆に構成された造形作品。しかしながら明るいナチュラル色のオーク材フレームは、周りの木製家具やフローリングと溶け込みます。それは、その斬新でインパクトのある形に対して、色合いによる引き算がされ、" 色と形の美しい計算式 "が完成されているかのよう。

奇抜な造形センスとは裏腹に、「天才は話してみると意外と気さくだった」そんな想像をさせてくれる人当たりのいいデザインです。