HIDA
Mori no Kotoba Bench
本日も、荒れております。
無視できないくらいの粒が揃った雨が、降っては止み、降っては止んでおります。
よほどの予定がない限りは、お家にいたくなるような目まぐるしい天気です。
ここ数日雨も良く降り、土の匂いがたつような、春から梅雨の境目の始まりなのかも知れません。
本日ご紹介するのは、日本という土地が育んだ自然との在り方を感じる事の出来る、そんな一品。
宜しければ最後までお付き合い下さい。
森がわたしたちにくれる温もり
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今回は、福岡、愛知、旭川と比肩する家具の一大生産地、飛騨高山からのアイテム。
キツツキマークでもお馴染みの、飛騨産業のベンチになります。
飛騨産業の始まりは1920年。高山町三町の工場で試作を始め、当初社員は6名。
現代に続く100年企業の始まりはごく小さなものでありました。
少しずつゆっくりと時間を積み重ね、全国産業博覧会での銀賞、天皇陛下の銀婚式を記念した国産共進会にて金牌を受賞するなど実績を積み重ねてゆきます。
しっかりとした加工技術を持っていたのでしょう、終戦を間近に控えた1943年には木製戦闘機の開発、試験飛行に成功しています。
飛騨産業は連綿と続く時間の中で、デザイナーとの協働を行いアイテムのブラッシュアップを図っています。
天童木工とのアイテムでも人気の高い柳宗理や松村勝男、モダンを牽引したエンツォ・マーリや川上元美、
建築界隈としてトラフ建築設計事務所、そして国立競技場の記憶も新しい隈研吾(敬称略)など高い実力を持つ彼らのイマジネーションを実現する力量を持ったメーカーなのです。
今回のデザイナーは佐々木敏光(ささき としみつ、1949-2005)。カドが落とされた、赤ちゃんに優しいSDI ファンタジアのアイテムは見かけた事がある方も多いのではないのでしょうか。
日本の家具デザインを牽引した一人であり、飛騨産業とは「クレセント」「円空」「beans」「宗和」「wavok」シリーズと深いパートナーシップのある間柄。
極端すぎない優しさのあるデザインは人気が高く、安心感のあるお部屋づくりにアイテムを探されている方も多いデザイナーです。
今回のシリーズは「森のことば」。この名前から、静かな、けれども生き物が営む音で満たされた森閑な雰囲気を感じさせます。
素材はナラ(ホワイトオーク)のオイルフィニッシュ。より無垢材の質感を感じられる仕上げになっています。
2001年。家具業界としては初めての、「節」を用いた家具として製造されたこのシリーズ。今でこそ多くの企業が木が持つ表情を活かしたアイテムを作っていますが、それまで「節」は悪者とされていました。
綺麗な杢目を切り出すためには不要であり、色味も暗褐色なものが多い為「きれいな家具」を求める上では邪魔にしかならない。
そのために、それまで1本の丸太から家具に使用できる木材は10~15パーセント。
木と共に生きる企業であるからこそ、使われなかった「端材」に対して何かできる事があるのではないか、という葛藤があった事でしょう。
今では節や割れを上手に取り込んだアイテムは主流の一つになっています。木が生きていた時の雰囲気を感じさせ、節目を手でなぞって積み重なる生長の跡を想像する。
もちろん、「節」というイレギュラーとしっかりと向き合う事が出来無ければその良さを引き出す事は出来ません。それに加えて10年の実用に耐えうる造りでないと名乗れない「飛騨家具」。限られたメーカーにしか許されない、高いクオリティの一台です。
この家具に触れて暮らしてゆくと、手触りから五感を満たし、長く使う事で木々の命を大切にして、頂いた命を無駄なく使う。そんな地球に生きる「いきもの」として満たされた気持ちになれそうです。大切なお部屋の片隅に、こんな素敵なベンチはいかがでしょうか。