飛騨産業 キツツキ HIDA アイガー EIGER ナラ材 #713 アームチェア ラウンジチェア ジャパンビンテージ ~日本の中心、中庸(ちゅうよう)~

UPDATE: STAFF:トリス
飛騨産業 キツツキ HIDA アイガー EIGER ナラ材 #713 アームチェア ラウンジチェア ジャパンビンテージ ~日本の中心、中庸(ちゅうよう)~

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HIDA EIGER #713 Arm Chairs

最後の寒さ(と思いたい)が春一番のような強風と共に過ぎ去れば、日差しに血潮が暖められるかのような良い日より。 日本大学最寄りのわれらが祖師ヶ谷大蔵駅では、期待と不安がないまぜになった学生を沢山見かける事が出来ました。新しい環境、頑張れガクセイ。 例えば期末試験、学園祭、卒業式と記録に残るイベントがあれば多くの人が後からそれを思い出す事が出来ますが、 その間にある「この単元に苦戦した」とか「誰それが付き合い始めた」とか、「マックのポテト美味しかった」、「卒業生の胸に付ける花飾りがうまくつけられなかった」なんて事は忘れ去られてしまうもの。 今回は、そんな一昔の思い出と共にあったであろう、ひそかな名脚をご紹介。 宜しければ、是非最後までお付き合いいただければ幸いです。

光のどけき春の日に

>>この商品の詳細を確認する 今回はジャパンビンテージのアームチェア。今であればラウンジチェアという呼称の方がしっくりくるかもしれません。 第一印象でとてもホッとする見た目。その理由はどこにあるのでしょうか。 まずはそのサイズ感。 全高は約67センチ、座高も約36センチと抑えられたボリューム感。 この椅子はいわゆるミッドセンチュリー期の1960年に発表されたシリーズ。戦後急成長する日本の中で求められた、和室や床座の暮らしに親和性のある洋家具です。重心が低く、お部屋の高さが感じやすい特徴があります。 リビング用途のこの椅子は当時の日本人の標準体型等も参考にされたと思われ、コンパクトな中で出来うる限りの要件を満たす正に「和洋折衷」が体現された家具かと思います。 手掛けたのはキツツキの愛称で人気のファニチャーブランド、飛騨産業(HIDA)。 飛騨高山は古来より木を用いた建築や建具など職人による技術が継承されてきた伝統の地域です。 現代では「飛騨の家具」を名乗るためには10年の長期に渡る保証期間にふさわしい造り込みや、純国産である事等幾つもの要件を満たす必要があります。 時代が経つにつれ、安かろう悪かろうなアイテムも舶来の高級な家具も選べるようになってきた日本において、日本らしい価値を探し、責任と同時に担い続けた実力派のメーカーです。 今回は、残存しているメーカーロゴから1970年以降に製造されたものと判断できます。 日本のプロダクトデザインの金字塔でもあるグッドデザイン賞を受賞したのが1966年となりますので、それ以降にますます高まる人気の中で生まれた2脚。 アイテムそのものでも美しさや使い心地は勿論楽しめますが、時代背景を想像させてくれる歴史的資料が残っている事でますます愉しみが増えるのは嬉しいところです。 肝心の座り心地ですが、暮らしに使いやすい丁度良い感じ。中庸ですがどちらかといえばフカフカ寄りなクッションの感触です。 シートは底板にウレタンフォームを付け、ファブリックを貼り込んだスタンダードなタイプ。張替えもし易く、長く使う事を前提としたデザインです。 この椅子はある程度深めに腰掛けた方が背もたれのフィット感も含めて塩梅が良いのですが、そのポジションへと導く座面の窪みやその結果当たりやすくなる膝裏に沿う丸み等、細かな気配りが美しさに繋がっている印象です。 クッションが付いているタイプは一定の厚みでまんべんなくというのが大多数なので、底板からきちんとカーブを作っている丁寧な造りが当時の国産家具に取り入れられていた事。それも人気の一つだったのだと思います。 いわゆる「籐巻き」と呼ばれるディティール。ビンテージだと無くなっているものも多いのですが、今回は2脚とも残存しております。 曲木のフレームを繋ぎ合わせる箇所を隠す事でより一体感が増すように仕向け、また立ち座りの際に掴み易くする効果もあります。 他にもシートに繋がるフレームも、荷重の向きに合わせてわずかに角度を変えていたりと「まあ、これでいいや」という妥協のまったくないこだわりが窺えます。 このアイガーチェアは葭原 基(よしはら もとい)氏によるデザイン。飛騨産業の要職も務めた氏はとある紙面のインタビューで「売れる」事が大切だと述べています。 前提として、クドくなくシンプルで、安全性や使い勝手を十分に吟味したアイテム。 世の中に出して、急激に売れなくてもいいから、話題にならなくてもいいから、次第に数が増え売れ続けるもの。 そんなデザインが良いと話すだけあって、良い意味で通好みな知名度ですが、手放すのが惜しくなるような愛着の生まれる椅子を世に出してくれました。 良質なブナ材をフレームに使ったこのチェアは取り回しも軽いので、今日のように天気の良い日は縁側や庭先に持って行った人もいたのではないかと想像します。 多く売れ、使い続けられた椅子。芸術品のように飾り愛でられるのではなく、日常を支えたからこそ記憶に残る椅子。 このブログを御覧の貴方ならどんな使い方を想像するのでしょうか。もしよろしければ是非手に取って、考えを巡らせて頂きたい。そう思える、日本の名脚です。

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