デザインとアートのあいだ
フィンランドを代表するデザイナー、Tapio Wirkkala(タピオ・ヴィルカラ)。
70年の生涯の中で手がけた作品は、テーブルウェア、家具、ケチャップの容器、ウォッカのボトル、飛行機の機内用食器やカトラリー、紙幣から「ミラノ・トリエンナーレ」の空間デザインと多岐にわたります。
そんな彼の人生の“ 転機 ”は、iittala(イッタラ)との出会いにありました。
Pick up " Tapio Wirkkala" Glass items
同氏の作品の特徴といえば、氷や水、植物などの自然にインスピレーションを受けたデザインが多いこと。
どのアイテムにも共通して、美しく繊細なフォルムがフィンランドの大自然を想像させるのです。
一目見てそのモチーフが思い浮かぶことの多いタピオのガラス作品。今回は、きのこと葉っぱです。
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カンタレッリ|Kantarelli(1947-1959)
1946年に発表された初期の作品として、彼の地位を決定づけた「Kantarelli(カンタレッリ)」。モチーフは、あんず茸というきのこです。
“ 一目見て ”なんて、ついさっき紹介してしまいましたが、あんず茸…ピンときません。というわけで調べてみたところ、ややオレンジがかった黄色いきのこでした。
そして目に留まるのは、カサ裏の無数の襞(ひだ)。作品にもしっかり取り入れられています。
iittala "Kantarelli" ガラスベース L
現在でも本国のイッタラで受注生産されているこちらのフラワーベース。「TAPIO WIRKKALA IITTALA 2007」のカットサインより2007年製の逸品のようです。
手作りだからこそ、少しずつ異なる大きさや形状。つまり、自然界に自生するきのこのように、同じ個体は2つとありません。今回は、傘の部分が平たい印象です。
Vintage iittala "Kantarelli" ガラスベース M
先ほどよりひと回り小さいこちらは、恐らくビンテージの逸品です。小ぶりながら傘部分に角度があり、すらっとしています。
抜群のプロポーションで、花器としてだけではなくオブジェとしても凛とした魅力を放ってくれそうです。
リーフ(レフティ)|Lehti(1952-1960)
木や陶器のシリーズにもある「Lehti(リーフ / レフティ)」。アメリカの雑誌では「今年最も美しいオブジェ」にも選出された作品です。
中でもガラスのデザインはイッタラのために作られたもの。もちろんモチーフは葉っぱです。
彼のデザインワークがまさに絶頂期だった頃の作品で、その時代を「ヴィルカラ時代」と呼ぶこともあるんだそう。
Vintage iittala "3337" オブジェ L
25×20cmのかなりダイナミックなガラスの木の葉。つややかで、ぽってりと厚みのある「Art Object 3337」は、言葉で表現するなら“ グラマラス ”ではないでしょうか。
さらに、緻密なカットワークで作られた葉脈には、息を飲むばかり。
Vintage iittala "3337" オブジェ S
第一印象は、ぷっくり、ころん。上記のリーフを約1/3にしたこちらは、手のひらに収まるサイズの「Art Object 3337」です。
黒をバックに反射する影もアートにしてしまう、小さな小さな芸術作品なのです。
カンタレッリかリーフか…
Vintage iittala "3268" アッシュトレイ L
「Ashtray 3268」はカンタレッリと同じカットラインで作られた作品。でも形はキノコというよりリーフ。明確なシリーズ分けが難しい作品です。
とはいえ、その美しさはどちらのシリーズにも引けを取らず…灰皿として使うなんてちょっと勇気がいりそうです。
タピオか否か…
Vintage ガラスベース ミニ
こちらは、カンタレッリシリーズでみられるミニフラワーベース。なのですが、実はカットサイン(刻印)が見当たりません。
つくり自体はかなり精巧なので、サインを彫り忘れた希少な逸品の可能性も。ただ残念ながら正確な情報がないので、タピオスタイルでの販売となりました。
他にも…
タピオの作品はまだまだ他にも!イッタラだけでは収まりきらない彼の魅力をぜひご堪能下さいませ。
おわりに
見たまま、感じたままの自然をそのままガラスに落とし込む、タピオの芸術性。
母国、フィンランドでは「応用美術の父親」とも称されているようですが、個人的にはとある雑誌の中で紹介された「ガラスの詩人」という呼び名の方が似合うと思っています。
その一端を感じられる作品たち。デザインとアートのあいだのようなその美しさをぜひ実際にお楽しみ頂ければ幸いです。