TON
Vintage Arm Chair
実を言うと、「欲しかった椅子は?」と聞かれても、すぐに思い浮かぶものがない。
素敵な椅子が入荷しても、その瞬間だけ「可愛い!」と心が動き、時間が経てば少し違う気がしてしまう。ずっと憧れていた一脚、というものがほとんどないのだ。
それもきっと私の部屋が、畳に障子、床の間まで揃った6畳の和室だからだろう。
中心にあるのは民芸家具のライティングビューロー。
その存在感を軸に考えると、洗練された洋のデザインはどうしても一歩引いた存在になる。今はヴィンテージのラッシ編みスツールを合わせているけれど、作業をしているとやはり背もたれが恋しくなるものだ。
そんな折に入荷したのが、チェコの老舗メーカー“TON”が60年代に発表したアームチェア。
最初は「木目がきれいだな」くらいの印象だった。手入れをし、角度を変えながら撮影をしているうちに愛らしく見えてきた。
ずんぐりとしたアームから背もたれにかけてのデザインはどこかペンギンのように、そこからすっと伸びる脚との対比が渡り鳥の姿のようにも思えてきた。
試しに腰掛けると、広い座面と程よく傾斜した背もたれが静かに身体を受け止める。
派手さはないのに、気づけば心に残っている。そんな椅子だった。
迷っているうちに椅子は旅立って行ってしまった。
仲良しのお客様から貰った「迷うなら買いなさい」という言葉を、今になって少しだけ噛みしめています。











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