Jiro Kimura
counter table
木村二郎。
スケッチ、絵、オブジェ、映像、建築など多岐にわたる作品を世に残している今は亡きデザイナー。
特に、椅子など彼の独創性溢れる家具が大きな評価を得ています。
筆者独自の感覚としては、プロダクトのユニークさはエアコンディションド、価値観はイサムノグチといったところでしょうか。
今回はそんな鬼才が手掛けたプロダクトをご紹介。
彼の人生を振り返りながら、綴っていくこととします。
自然と古材を愛した鬼才。
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大阪でインテリアデザイナーとして活躍していた木村二郎。
「仕事のスタイルを変えて自分の仕事をしたい。クライアントは自分」。
徹夜生活が続いていた同氏は、商業ベースの仕事のやり方と暮らしに疑問を持ち、環境を変える決意をしました。
1989年。
四季折々の草花、豊かな森林、美しい田園風景に心を奪われ、山梨県八ヶ岳南麓に移住。
築130年の古い農家を住処としました。
古い農機具や道具の機能美に興味を持った同氏。
1993年、山梨県八ヶ岳南麓にギャラリートラックスをオープンしました。
斬新な手法で空間をプロデュース。
彼が生み出す独創的なプロダクトや空間が、一般の方のみならず多くの作り手を魅了し、アーティストの発信基地となりました。
同時に、偶然にも近隣の農家の解体から梁や柱を譲り受けた同氏。
古材デザイナーと呼ばれる彼の古材との出会いここにありました。
全く木工技術もなかったが巧みにそれらを利用して大きな展示台や家具を自らの手で創作。
古材の特性を生かしながらモダンなデザインと機能性を持つ家具は、現在でも多くのファンを魅了しております。
彼が残す作品の数々には、”意図的なズレ” を感じます。
性格的に人と同じことをすることが大嫌いだったそう。
八ヶ岳に身を置いたのは、時代の流れに影響されず大自然からインスピレーションを得るため。
無駄な情報を一切遮断し、本能のまま純粋に創作活動を楽しんでいました。
ズレは「絶対に他の人と同じものを作ってたまるか!」
という決意の表われかもしれませんね。
ここでやっとアイテムのご紹介。
木村二郎が手掛けたカウンターテーブルです。
古材やアイアンを用いた同氏の特徴が現れたテーブル。
一見、前述した”意図的なズレ”は感じられません。
私が注目したのはアイアンフレーム。
L字型のアイアン脚は普通、折れ曲がった角を外に向けますよね?
このアイアンは逆で角を内に向けているんです。
意図は不明ですが、人と同じことを嫌う同氏の反骨心や遊び心が反映された部分なのかなと感じております。
W181cmと幅広、高さは90cmと高め。
作業台やカウンターテーブル、店舗什器としては丁度いい大きさですが、自宅で使用するとなると汎用性がないように感じられるかと思われます。
しかし、独特な高さだからこそ自由自在に使用できると、私は思います。
バスルームにて、天板下にドラム式洗濯機を差し込んで、天板はタオル置きにしたり。
キッチンにて、天板下にチェストを差し込んで、天板は料理場にしたり。
使い手の趣味・嗜好・アイデア次第で、未だかつてないユニークな使い方が出来るのではないでしょうか。
自然と古材を愛した鬼才。
亡くなる前に、金に振り回される人間の愚かさを嘆いたそう。
希望の灯りは消えかかっていると。
彼は、お金ではない純粋に楽しむ心を後世に託すため、ギャラリートラックスに想いを描き残しました。
Hope.
ギャラリートラックスは現在も美術展&カフェとして八ヶ岳に残っております。
希望の光を灯び続ける当事者として、我々も一度足を運ぶべき場所だと思います。